食品安全関係情報詳細
資料管理ID | syu06090410535 |
タイトル | 英国毒性委員会(COT)、「英国産貝類における新興海洋性生物毒のリスク - ピンナトキシン」を公表 |
資料日付 | 2023年6月29日 |
分類1 | - |
分類2 | - |
概要(記事) | 英国毒性委員会(COT)は6月29日、2023年7月11日会合用の協議事項及び文書として、「英国産貝類における新興海洋性生物毒のリスク - ピンナトキシン」を公表した。(TOX/2023/37、PDF版43ページ)。概要は以下のとおり。 1. 背景 英国食品基準庁(FSA)は、海洋性生物毒素に関する現行の提言とモニタリング・プログラムについて、及び、既存の法的基準を更新あるいは変更する必要があるか否かについて検討している。 本取り組みの主たる目的は、英国海域において新興となる海洋性生物毒素を特定することであり、これには、気候変動による気温上昇に伴い発生率が上昇する可能性の検討が含まれる。COTは、これらの海洋性生物毒素の何れかがヒトの健康にリスクをもたらすか否かに関し、見解を求められている。今秋には、ペクテノトキシン(Pectenotoxin)に関するディスカッションペーパー、及び、新興生物性毒素の概要を提示するスコーピング・ペーパーがCOTに提出される予定である。 本稿では、ピンナトキシン類(PnTXs)として知られる新興海洋性生物毒の一種と関連する、英国海域産貝類(shellfish)の摂取に伴うヒトの健康に対するリスクに関し、情報及びデータを提供する。当該毒素は現在、英国海域の貝類においては規制及び監視の対象ではない。そのため、本稿では、PnTXsの毒性学的データベースと、現行のFSAイングランド・ウェールズ生物毒性モニタリング・プログラムにPnTXsを含める必要性を検討している。さらに、気候変動や英国周辺の海水温上昇により、ピンナトキシン類の蔓延が新興する可能性についても考察している。本稿は、他機関や他の管轄当局による過去の評価を参考としている。文献検索も実施され、2023年3月1日までの関連論文を収載し、詳細は附属書Aに記載された。 2. 序説 PnTXsは、南シナ海産の二枚貝・Pinna attenuate(ハボウキガイ)おいて1990年に初めて単離された親油性生物毒素の一種であり、現在までに類縁体8種(PnTX-A - PnTX-H)が同定されている。これらの毒素は環状イミン類に属し、化学構造や分子標的の点において他の環状イミン類と類似する。 3. 現在までの評価 2006年、フランス地中海産貝類に含有される親油性毒素を標的とする規制モニタリングにおいて、イングリル・ラグーンにて採取されたムラサキイガイ(ムール貝)の抽出物が、マウスを用いたバイオアッセイにおいて非典型となる神経毒性作用を誘発することが示された。2011年、研究者らはピンナトキシンG(PnTX-G)を毒性化合物と特定し、2009年から2012年にかけて採取されたムラサキイガイのサンプルを分析した結果、マウスのバイオアッセイにおいて観察される毒性を発揮するのに十分量となるPnTX-Gが定期的に発生していることが明らかとされた。フランス国立海洋科学研究所(Ifremer)及びフランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)によると、PnTX-G含有量は、貝肉全体においては定期的に40 μg/kgを超過し、1,244 μg/kg貝類に達している。イングリル・ラグーンから分離されていた微細藻類Vulcanodinium rugosum(渦鞭毛藻綱)の培養から、当該藻類がPnTX-Gを産生することが確認され、当該地域の貝類におけるPnTX-G汚染の原因である可能性が高いことが判明している。 マウスを用いたバイオアッセイにて急性毒性が観察されているが、現在までヒトの中毒は報告されていない。 4. 概要及び結論 PnTXsは藻類V. rugosumにより産生され、ムラサキイガイやハマグリ等の濾過摂食性貝類において生物濃縮されるため、ヒトの健康に対する潜在的リスクとなる。 現在までに、PnTXsによるヒトの中毒症例は報告されていない。しかしながら、入手可能なデータから、マウスに経口投与あるいは腹腔内投与すると、アセチルコリン誘発性(acetylcholine-evoked)のニコチン性アセチルコリン受容体活性を阻害して神経信号を遮断するという、PnTXsが原因となる強力な急性毒性が示されている。 現在までのところ、英国産貝類がPnTXsを含有することを示すデータは公表されていないが、ノルウェー、フランス、スペイン北部産の貝類からPnTXsが検出されている。当該事例や、微細藻類V. rugosumの温度垂直分布を考慮すると、PnTXsが英国海域に既に存在している可能性、あるいは、今後到達する可能性がある。 5. COTに検討を要請する質問 i) COTは、PnTXsと関連する公衆衛生上のリスクがあると考えるか ii) COTは、英国海域産貝類に含まれるPnTXsに関するリスク評価を実施するために、十分な毒性学的データ及び発生データが得られていると考えるか iii) COTは、イングランド・ウェールズのFSAモニタリング・プログラムにPnTXsを含める必要があると考えるか iv) COTは、英国水域の水温上昇がV. rugosumの発生及び英国産貝類におけるPnTXs汚染の増加につながるか否かに関し、意見があるか v) COTは、他に何か意見があるか (注) 本文書はディスカッションを目的とする。COTの見解を示すものではなく、引用されるべきではない。 |
地域 | 欧州 |
国・地方 | 英国 |
情報源(公的機関) | 英国毒性委員会(COT) |
情報源(報道) | 英国毒性委員会(COT) |
URL | https://cot.food.gov.uk/Risk%20of%20emerging%20marine%20biotoxins%20in%20British%20shellfish%20%E2%80%93%20Pinnatoxin |