食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06050050314
タイトル ドイツリスク評価研究所(BfR)、ビスフェノールAについて、健康影響に基づく基準値を提案し、完全なリスク評価のためには最新のばく露データが必要との意見を公表
資料日付 2023年4月24日
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分類2 -
概要(記事)  ドイツリスク評価研究所(BfR)は4月19日、ビスフェノールAについて、健康影響に基づく基準値を提案し、完全なリスク評価のためには最新のばく露データが必要との意見を公表した。概要は以下のとおり。
 ビスフェノールA(BPA)は化学物質であり、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の製造に使用されている。スマートフォン、飲料用ボトル、プラスチック食器、塗料、接着剤、缶容器のコーティング剤など消費財に広く使用されている。当該化合物の摂取は主に食品を介してであるが、空気、粉塵、水もBPAの摂取源となる可能性がある。BPAの急性毒性は低い。しかし、長期間の動物を用いた研究では、この物質にはある種の毒性作用があることが指摘されている。BPAの健康リスクに関する評価は、長年に渡って世界的な科学的議論の対象となっている。
 欧州食品安全機関(EFSA) は2023年4月、BPAの再評価(https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6857)を発表した。その中で、2015年にEFSAが導出した暫定的な耐容一日摂取量(TDI:4 μg/kg体重/日)を20,000分の1にして、0.2 ng/kg体重/日に引き下げた。TDIは、特定の化合物を生涯にわたって毎日摂取しても健康への悪影響がない値を示す。ドイツを含めた欧州の住民におけるBPAの総摂取量は、長年に渡って減少傾向にあるが、あらゆる年齢層を対象としたEFSAによる新TDIを著しく上回っている。EFSAは、まずマウスを用いた研究結果に基づいてTDIを引き下げた。このデータによると、妊娠中及び妊娠後にBPAを摂取した母マウスの子どもでは、特定のタイプのTヘルパー細胞(Th17細胞)の割合が相対的に増加した。
 BfRは、いくつかの科学的・方法論的矛盾(divergences)を理由に、EFSAが導き出した新しいTDIを支持しない。例えば、観察されたTh17細胞の相対的な増加が研究対象のマウスに有害な影響をもたらすことを示す証拠は今のところなく、その結果のヒトの健康への影響は疑わしい。規則(EC)178/2002には、科学的見解が分かれる場合の規定が含まれている。EFSAのウェブサイトには、EFSAの見解(https://open.efsa.europa.eu/consultations/a0c1v00000JA9rGAAT)に関する公開協議の枠内におけるBfRの意見および意見の相違(ダイバージェンス・ペーパー)も公開されている(https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/2023-04/bfr-efsa-art-30.pdf)。BfRに加えて、欧州医薬品庁(EMA)もEFSAの再評価の方法論について、異なる見解を示している。
 BPAに対する消化管(経口、すなわち口経由)ばく露の毒性学的な影響に関する科学的データの詳細分析に基づいて、BfRは0.2 μg(200 ngに相当)/kg体重/日のTDIを導出した。この値は、2015年にEFSAが導出した暫定TDIの20倍低い。BfRはTDI導出の際、保守的なアプローチに従い、定量的な統計に基づく手法を使用し、残されている多くの不確実性も考慮した。BfRの評価では、2023年のEFSA意見で特定された重要なエンドポイント(免疫系への影響、生殖毒性、血清中の尿酸値の上昇)に焦点を当てた。BfRが導出したTDIは、保守的なアプローチと他の当局による評価に基づき、さらなる毒性学的エンドポイント(一般毒性、発がん性、脳と行動への影響など)に対しても保護的である。そこでBfRは、リスク評価の健康基準値として0.2 μg/kg体重/日のTDIを使用することを提案する。
 ドイツ及び欧州の住民における最新のばく露量推定値がないため、信頼性のある包括的なリスク評価は現時点では不可能である。主に、2008年から2012年までのデータに基づいて、EFSAは2015年に、欧州の住民における食品を介したばく露量を、0.1~0.4 μg/kg体重/日(成人)及び0.1~0.9 μg/kg体重/日(乳幼児及び子ども)と推定した。しかし、ヒトのバイオモニタリングによる尿データから、このばく露量の推定値は高すぎる可能性があることが示唆された。また、法的規制措置の影響もあり、近年はばく露量が減少し続けていると考えられている。BPAが消費者に健康リスクをもたらすかどうかを評価するために、BfRは、最新のデータを追加で収集し、評価することを推奨している。
 EFSAとBfRの両機関にとって、方法論と結果の解釈に関する議論は、通常の科学的プロセスの一部であることを強調することが重要である。これらの議論は、リスク評価手法の更なる発展に貢献し、ひいては長期的に起こりうる健康リスクのより良い評価に寄与するものである。
地域 欧州
国・地方 ドイツ
情報源(公的機関) ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)
情報源(報道) ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)
URL https://www.bfr.bund.de/cm/343/bisphenol-a-bfr-schlaegt-gesundheitsbasierten-richtwert-vor-fuer-eine-vollstaendige-risikobewertung-werden-aktuelle-expositionsdaten-benoetigt.pdf