食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu05630390464
タイトル オーストリア保健・食品安全局(AGES)、トピックとしてシアン化水素酸を紹介
資料日付 2021年5月21日
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概要(記事)  オーストリア保健・食品安全局(AGES)は5月21日、トピックとしてシアン化水素酸を取り上げた。概要は以下のとおり。
1.特徴
 シアン配糖体は、植物ベースの食品(杏子、杏子の仁(アプリコットカーネル)、ビターアーモンド及び亜麻仁など)に天然に存在する化合物である。
 咀嚼又は摂取することにより、これらの化合物からシアン化水素が放出されることから、過剰摂取は重篤なシアン化物中毒に繋がり、致命的となる場合もある。
(1)発生
 ビターアーモンド、ビターアプリコット及び杏子の仁の他に、キャッサバ及びソルガムキビ(特に畜産用)も、シアン配糖体の含有量が多い。シアン配糖体アミグダリンは、結合型のシアン化水素(シアン化物)を含有する。シアン化物は、一部の植物にとって、天敵から自らを保護するための物質である。アミダクリン含有量は、ビターアーモンド、杏子及び杏子の仁で圧倒的に多い。
 皮をむいた生の仁を噛むと、アミグダリンからシアン化水素が放出される。咀嚼回数が多いほど、また、咀嚼時間が長いほど、より多量のシアン化水素塩が放出される。
 亜麻仁もシアン配糖体を含有する。亜麻仁をつぶしたり砕いたりすることにより、シアン化水素塩が体内に吸収される可能性がある。砕かない丸ごとの亜麻仁においては、シアン化水素はほとんど放出されない。
(2)フレーバー
 ビターアプリコット又は杏子の仁は(ビターアーモンドとも呼ばれる)は、伝統的に香り付けとしてマジパン、パルシパンなどの製品に風味付けとして使用されている。これらの製品のシアン化水素含有量は規制されている。ビターアーモンド(特性及び考えられる用途は杏子の仁と同じ)は、やはり風味付けとして焼成品(クリスマスのシュトーレンなど)に使用される。こうした製品中のシアン化水素は、仁を加熱すると大半が気化することから、通常は問題とならない。
2.オーストリアの状況
 オーストリアでは、スナック菓子として直接摂取する杏子の仁又はビターアプリコットの仁の販売が増えている(店舗又はインターネット)。一部の製品は、安価で効果的な抗がん作用を謳っている。製造者は、仁が含有するビタミンB17(「Laetrile」:アミグダリン)又は有毒なシアン化水素酸ががん細胞を死滅させるとしている。しかし、そのような作用は科学的に証明されていない。
(1)杏子又は杏子の仁の定期検査
 杏子又は杏子の仁に関しては、欧州連合(EU)が定める基準値(Maximum level:ML)に準拠しているかを見るための政府による食品管理の一環として、定期的に検査が行われる。杏子又は杏子の仁(未加工、丸ごと、すりおろしたもの、挽いたもの、砕いたもの)におけるシアン化水素に関するMLは20μg/kg食品である(規則(EU) 2017/1237)。当該MLは、ビターアプリコット、スイートアプリコット及び杏子の仁にも適用される。
 2016年、EFSAはビターアプリコットの仁のリスク評価を更新し、シアン化物の摂取源が、ビターアーモンド、ビターアプリコット又は砕いた亜麻仁のどれであるかに関わりなく、シアン化物の急性参照用量(ARfD)を20μg/kg体重と設定した。この安全と推定される用量は、成人が1日に小さな杏仁を3つ程を摂取することに相当する。
(2)亜麻仁のモニタリング
 現時点において、砕いた亜麻仁におけるシアン化水素のMLは定められていない(欧州委員会規則(EC)1881/2006)。政府による一連の管理が行われる中、2019年以降、砕いた亜麻仁から非常に高濃度のシアン化水素が検出されたこと、及びその濃度が、欧州食品安全機関(EFSA)により安全と考えられる用量を超過したことが繰り返し指摘されている。
 2020年、オーストリアにおいてモニタリングが実施された。砕いた亜麻仁のシアン化水素含有量の概要を知ることが狙いであった。更に、食品中の特定の汚染物質に関しては、介入値(「オーストリア食品ブック」(OLMB)(※注)に公表されている)に沿って注意喚起が添付されているかについて、表示も確認しなければならない。
(3)オーストリア食品ブック(※注)に基づく注意喚起表示
 EFSAが行った評価及びオーストリアが行った評価のどちらにおいても、バイオアベイラビリティが低下することを考慮した場合でも摂取制限の必要性が示され、特に子供に焦点を当てるべきであるとされた。成人においては、毒性学的観点から、1日の総亜麻仁摂取量と比べ、食事1回当たりの亜麻仁摂取量はより重要である。
 オーストリア食品ブックに拠る食品中の特定の汚染物質に関する介入値において、亜麻仁製品は、摂取制限を含む適切な注意喚起表示の対象として明記されている。注意喚起表示は、問題を消費者に知らせることに繋がる。以下のような注意喚起が必要である。
 『亜麻仁は、細かく砕くとシアン化水素を放出する物質を含有する。砕いた亜麻仁を摂取することにより、シアン化水素が体内に吸収される可能性がある。』
 摂取に関しては、以下のような制限が明記されなければならない。
・砕いた亜麻仁の成人における摂取量は、食事1回につき大さじ1杯まで。
・砕いた亜麻仁の小児における摂取量は、1日に小さじ1杯を超えてはならない。
・砕いた亜麻仁は、4歳未満の小児には適さない。
・丸ごとの亜麻仁に関しても同様である。
3. 総合的な助言
・杏子の仁又はビターアプリコットの仁をスナック菓子として摂取することをやめるべきである。
・「ビタミンB17」(「Laetrile」:アミグダリン)の摂取をやめるべきである。
・砕いた亜麻仁の摂取量:成人においては、食事1回につき大さじ1杯まで。
・4歳以上の小児においては、1日当たり小さじ1杯まで。
・一般的に、4歳未満の小児は、砕いた亜麻仁は摂取すべきではない。
(※注)Codexオーストリアによる。製品名、定義、試験方法及び評価原則に関する内容を含む。商品を市場投入する際のガイドラインとしても使用される。
地域 欧州
国・地方 オーストリア
情報源(公的機関) オーストリア保健・食品安全局(AGES)
情報源(報道) オーストリア保健・食品安全局(AGES)
URL https://www.ages.at/index.php?id=35545&pk_campaign=AGES%2520Newsletter%252004%252F21&pk_kwd=PAGE83026