評価書詳細

項目 内容 添付資料ファイル
評価案件ID kya20050524219 -
評価品目名 現在のカナダの国内規制及び日本向け輸出基準により管理されたカナダから輸入される牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、我が国でとさつ解体して流通している牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合の牛海綿状脳症(BSE)に関するリスクの同等性 -
評価品目分類 プリオン -
用途 -
評価要請機関 厚生労働省 -
評価要請文書受理日 2005年5月24日
評価要請の根拠規定 食品安全基本法第24条第3項 -
評価目的 現在のカナダの国内規制及び日本向け輸出基準により管理されたカナダから輸入される
牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合と、我が国でとさつ解体して流通している
牛肉及び牛の内臓を食品として摂取する場合の牛海綿状脳症(BSE)に関するリスクの同
等性に係る食品健康影響評価
-
評価目的の具体的内容 -
評価結果通知日 2005年12月8日 -
評価結果の要約 <評価書「結論」抄>
 これまでの国内のリスク評価では、BSE対策の実効性等をほぼ明らかにすることができ、それに基づいて評価した。しかし、今回の諮問では国外という状況のため、牛肉等のリスクに関しては米国やカナダの場合は文書に書かれた原則の評価と、一部リスク管理機関からの情報及び専門委員などからの補足説明をもとに評価せざるを得なかった。従って、不明な側面もあることを考慮する必要がある。また、輸出プログラムの遵守についても守られることを前提に評価しなければならなかった。
 米国・カナダに関するデータの質・量ともに不明な点が多いこと、管理措置の遵守を前提に評価せざるを得なかったことから、米国・カナダのBSEリスクの科学的同等性を評価することは困難と言わざるを得ない。他方、リスク管理機関から提示された輸出プロ
グラム(全頭からのSRM除去、20ヶ月齢以下の牛等)が遵守されるものと仮定した上で、米国・カナダの牛に由来する牛肉等と我が国の全年齢の牛に由来する牛肉等のリスクレベルについて、そのリスクの差は非常に小さいと考えられる。
 これらの前提の確認はリスク管理機関の責任であり、前提が守らなければ、評価結果は異なったものになる。
 上記のことを考慮した上でリスク管理機関が輸入を再開する措置をとった場合には、仮定を前提に評価したものとして、プリオン専門調査会は管理機関から輸出プログラムの実効性、およびその遵守に関する検証結果の報告を受ける義務があり、また、管理機関は国民に報告する義務を負うものと考える。
評価結果の要約補足 <評価書「結論への付帯事項」抄>
 本諮問を答えるにあたり、2つのことを強調しておきたい。1つは諮問の経緯で述べたようにリスク評価機関とリスク管理機関の責務を明確にする必要があることである。本答申を受けて、リスク管理機関が判断し施策を実行する場合は、その結果を国民に説
明すること、輸入再開の場合は輸出国に対して輸出プログラムの遵守を確保させるための責任を負うものであることを確認しておきたい。
 第2に、食品安全委員会プリオン専門調査会は、本諮問に答えるために、我が国と米国及びカナダの国内対応の違い等を比較した。諮問は日本向け輸出プログラムの上乗せ条件を前提としたリスク評価を求めたものであり、リスク評価も輸出プログラムが遵守
されることを前提に評価した。従って、輸出プログラムが遵守されるためのハード、ソフトの確立とその確認は最も重要なことである。もし、輸出プログラムが遵守されない場合はこの評価結果は成立しない。
 リスク評価の過程で問題となった、以下の点についても補足しておきたい。
① SRM除去については、米国及びカナダにおけると畜場での監視の実態が不明であり、リスク管理機関による安全担保についてもその実効性に疑問が残る。特にせき髄片の牛肉等への混入は、その確率は低くとも、起きた場合にはリスクの要因になり得
る。そのような場合には、SRM除去に関しては、米国・カナダの牛に由来する牛肉等のリスクが日本のものと同等かどうかは不明である。そのため、せき髄除去の監視体制の強化を図る必要がある。
② 米国及びカナダにおけるBSEの汚染状況を正確に把握し、適切な管理対応を行うためには、健康な牛を含む十分なサーベイランスの拡大や継続が必要である。管理対応がある程度効果を示し、流行が不連続で地域的な偏りや散発的な状況になった場合
には、最低限、高リスク牛の全てを対象とした継続的なサーベイランスが必要であると考えられる。
③ 米国及びカナダでのBSEの暴露・増幅を止めるには、BSEプリオンの感染性の99.4%を占めるSRMの利用の禁止が必須である。牛飼料への禁止のみならず、交差汚染の可能性のある、他の動物の飼料への利用も禁止する必要がある。
 今回のリスク評価は日本向け輸出プログラムの遵守を前提に行った。従って管理機関が遵守を保証する必要がある。リスク管理機関は、米国及びカナダから日本向けに輸出される牛肉及び牛の内臓について実施されるリスク低減措置が適切に実施されることが保証されるシステム構築を行う必要がある。考えられるシステムとして、日本向け輸出牛肉等を処理加工する施設の認定制度及びそれら施設への行政による定期的な立入調査等を含む管理システムが有効なものとして考えられる。
 もし、リスク管理機関が輸入再開に踏み切ったとしても、管理処置の遵守が十分でない場合、例えば出生月齢の証明が出来ない場合、SRM除去が不十分な場合、処理・分別過程において牛肉等が21ヶ月齢以上のものと混合され得る場合など、人へのリスクを否定することができない重大な事態となれば、一旦輸入を禁止することも必要である。
<評価書の通知書>
 なお、本食品健康影響評価は、輸出プログラムの遵守を前提に行われたものであるため、貴省において、米国及びカナダからの牛肉及び牛の内臓の輸入を再開する施策を実施する場合にあっては、輸出プログラムの遵守の確保のために万全を期すとともに、遵守状況の検証結果について、食品安全委員会に適宜報告を行うようお願いします。同時に、国民に対しては、施策の内容及び輸出プログラムの遵守状況の検証結果について、十分な説明を行うようお願いします。
 また、本食品健康影響評価の過程で議論があった米国及びカナダの牛海綿状脳症(BSE)対策について、留意点が結論への付帯事項として記載されているので、貴省から、米国政府及びカナダ政府に申し入れていただくようお願いします。
 この他、本件に関して行った国民からの意見・情報の募集及び全国7ヶ所で開催した意見交換会においては、多くの意見・情報が寄せられましたが、リスク管理に係るものも多くありました。寄せられた意見・情報の概要及びそれに対する回答をまとめたもの
を添付しますので、貴省におかれましては、今後の施策の実施に当たって、これを踏まえて適切に対応されることを望みます。
(平成17年12月8日府食第1184号)
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