鉛の評価書に関するQ&A

令和3(2021)年6月29日作成

Q&Aの一例

もっと他にも知りたい方のQ&A内容一覧

もっと他にも知りたい方は以下をご覧ください。

I.評価の背景

II.評価の内容

1.鉛へのばく露(鉛に生体がさらされること)の状況

2.鉛の毒性

3.評価の結果

Q17今回の食品安全委員会におけるリスク評価の結論はどのようなものですか。

Q18リスク評価に当たって、食事からの摂取量ではなく血中鉛濃度を用いて評価したのはなぜですか。

Q19現在の我が国の血中鉛濃度は、問題となるものですか。

Q20今回のリスク評価で難しかったところはどこですか。

Q21なぜ、血中鉛濃度を食事からの鉛摂取量に換算できないのですか。

Q22なぜ、疫学研究データを用いて有害影響を及ぼさない血中鉛濃度を導き出すことが難しかったのですか。

Q23今回の評価で明確にならなかったところはどこですか。

Q24我が国における今後の課題は何ですか。

III.鉛へのばく露を減らすための対応等

 

Q&A

I.評価の背景

Q1:鉛はどのような物質ですか。

A1:鉛は環境中に広く存在する金属です。自然由来の鉛が環境中に広く分布しているほか、人為由来の鉛も環境中に存在しています。人為由来の鉛が環境中に拡散した例として、過去の有鉛ガソリンの使用や鉛鉱山や精錬所からの排出などがあります。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」を参照してください。

 

Q2:鉛はどのようなものに使われていますか。

A2:鉛管、鉛板、蓄電池の電極、電線被膜、ハンダ、塗料・顔料、鉛ガラス等の製造、塩化ビニル樹脂の安定剤の原料に用いられています。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の別添1「鉛に関する食品健康影響について 一次報告」の「II.鉛の生産と用途」を参照してください。

 

Q3:鉛が食品中に含まれているのですか。

A3:鉛は土や水、大気中などの自然環境中に広範囲に存在しているため、鉛の存在する環境で栽培等された農畜水産物に含まれている可能性があります。また、製造工程で鉛を利用した機械や器具に触れた食品にも鉛が含まれる可能性があります。

 

Q4:環境中への鉛の排出量は増えているのですか。

A4:1970年代頃からの有鉛ガソリンの使用規制等により、人為由来の環境中の鉛は減少しました。

  • 旧通商産業省による行政指導等によって、1975年にレギュラーガソリン、1987年にプレミアガソリン(ハイオクガソリン)が無鉛化しました。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の別添1「鉛に関する食品健康影響について 一次報告」の「II.鉛の生産と用途」を参照してください。

 

Q5:食品安全委員会はなぜ自ら評価をすることにしたのですか。

A5:食品安全委員会は、厚生労働省から「清涼飲料水の規格基準の改正」(2003年)と「器具及び容器包装の規格の改正」(2008年)について鉛の食品健康影響評価(リスク評価)の要請を受けました。しかし、鉛のばく露※実態や国内外の情勢を踏まえると、清涼飲料水や器具・容器包装のみではなく、食品全般におけるリスク評価を行うことが適当であると判断し、第234回食品安全委員会(2008年4月17日開催)において自ら評価の対象として決定しました。

  • 食品安全委員会は、食品の安全性を確保するため、食品に含まれる可能性のある様々な危害要因を摂取することによって起こる健康への影響についてのリスク評価を行っています。
  • 食品安全委員会が行うリスク評価には、新たな食品添加物や農薬を登録する場合などに厚生労働省、農林水産省等のリスク管理機関からの要請により行う評価のほか、リスク評価の対象案件を自ら選定して行う評価(自ら評価)があります。
「ばく露」とは
 ハザード(危害要因)に生体がさらされることです。一般的に食品安全の分野においては、飲食によりハザードが生体内に摂取されることをいいます(食事性ばく露)。しかし、鉛は環境中に広く分布しているため、日常生活において、食事性ばく露以外にも、大気や土壌、室内塵などから、ヒトは鉛にばく露されていると考えられています。(食品の安全性に関する用語集を参照:http://www.fsc.go.jp/yougoshu/kensaku_hyouka.html#item390

 

II.評価の内容

1.鉛へのばく露(鉛に生体がさらされること)の状況

Q6:食事からどのくらい鉛にばく露されていますか。

A6:2019年に実施された研究では、平均的な日本人の食事からの鉛の推定一日摂取量(食物だけではなく飲料水や、食品用器具・容器包装からのばく露も含んだ食事性ばく露全体の推定量)は8.88 µg/日となっています。
食事からの鉛の推定一日摂取量(一人当たり)は、1978年には100 µg/日以上ありました。しかし、1982年までに、有鉛ガソリンの規制といった対策により激減し、その後も、さまざまな対策により一定程度減少し、現在は1970年代の十分の一以下になっています。鉛の推定一日摂取量の経年変化(1977〜2019年)は図1のとおりです。

  • µgとは、1gの100万分の1の重量のことです。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

鉛の推定1日摂取量
図1 鉛の推定一日摂取量の経年変化(1977〜2019年)(穐山ら 2019)

 

Q7:鉛をどんな食品から多く摂っていますか。

A7:日本国内の調査では、特定の食品群や食品で鉛の摂取量が多いという傾向はみられませんでした。食品群別摂取率の一例は図2のとおりです。

  • 図2では各食品に含まれる鉛濃度と各食品の摂食量を乗じたものを摂取量としており、全食品群の摂取量に占める各食品群の摂取量の割合を食品群別摂取率としています。(例えば、米及びその加工品の摂取率が高いのは摂食量が多いためです。米及びその加工品の鉛の含有量が他の食品群と比べて特段多いわけではありません。)
  • 我が国における化学物質の食事性ばく露の量は、マーケットバスケット方式や陰膳方式による調査によって推定されています。
  • マーケットバスケット方式とは、化学物質(食品添加物や農薬など)を実際にどの程度摂取しているかを把握するため、スーパーマーケットなどで売られている食品を購入し、必要に応じて調理を行い、その中に含まれている化学物質の濃度を測り、その結果に国民健康・栄養調査などに基づく食品の平均的な喫食量を乗じて、食品に由来する化学物質の摂取量を推定する方法のことです。
  • 陰膳方式とは、調査対象者が一日に実際に食べた食事と全く同じものの重量とその中の化学物質の濃度を測り、それらを乗じて一日の食事に由来する化学物質の摂取量を推定する方法のことです。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」、別添1「鉛に関する食品健康影響について 一次報告」の「V.ヒトにおける曝露」の「2.経口曝露」を参照してください。

食品群別接種率
図2 マーケットバスケット方式による調査結果に基づく食品群別摂取率(2010〜2019年平均)

 

Q8:食事以外にも鉛へのばく露の原因となるものはありますか。

A8:日常生活において、食事以外にも、大気や土壌、室内塵などから、鉛にばく露されていると考えられています。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

 

Q9:日本人の鉛へのばく露は、主に何に由来するものが多いですか。

A9:日本人を対象とした研究でも、食事からの摂取量が多いとする報告があったり、土壌や室内塵由来のものが多いとする報告があったりと、報告間で大きなばらつきがありました。食事からの摂取量と比較して、土壌や室内塵からの摂取量も無視できず、場合によっては多い可能性があることが考えられました。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

 

Q10:日本人はどのくらい鉛にばく露されているのですか。

A10:性別や年齢層に偏りがあるものの、現時点で利用可能なデータに基づき判断すると、現在の我が国における平均的な血中鉛濃度(鉛へのばく露の程度を示す指標)は1 µg/dL程度あるいはそれ以下であると考えられました。

  • 血中鉛濃度は、食事、大気、土壌、室内塵などからの鉛へのばく露の実態を反映すると考えられています。
  • 小児については年齢層や地域が限られたデータであり、我が国の小児全体の血中鉛濃度の状況を反映しているとは限らないこと、また、成人については妊婦又は女性の報告が多いことから、我が国の成人全体の血中鉛濃度の状況を推測することには不確実性が伴うことに留意が必要です。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

 

Q11:過去と比べて、日本人の鉛へのばく露の状況はどうなっているのですか。

A11:我が国の最近の小児の血中鉛濃度は1990年代と比較すると低くなっています。また、成人(妊婦)の血中鉛濃度は過去25年間で1/5〜1/10に低下しているとの報告があることから、我が国での鉛へのばく露は減っていると考えられます。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

 

Q12:世界的に見て、我が国の鉛へのばく露の状況はどうなのですか。

A12:日本人の血中鉛濃度は、世界的にみても低い水準にあることから、鉛へのばく露量に関し、我が国は、世界的にみても低いグループに属すると考えられます。

  • 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)別ウインドウで外部サイトが開きますの対象者(妊婦)の血中鉛濃度は中央値0.61 µg/dLであり、米国のNHANESのデータに基づく研究における妊婦の血中鉛濃度の平均値0.62 µg/dLと同程度です。また、米国の血中鉛濃度は、性差や年齢差を考慮しても、他国と比較して低い水準にあると考えられます。これらのことから、我が国の血中鉛濃度は、世界的にみても低い水準にあると考えられました。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」を参照してください。

2.鉛の毒性

Q13:鉛はヒトの体に入り、蓄積しますか。

A13:口から入った鉛は消化管から吸収され、その吸収率は成人で10〜15%程度、小児で約40%です。吸収された鉛は血液、軟組織(肝臓、肺、脾臓、腎臓及び骨髄)及び骨に一旦蓄積されます。中でも骨に最も多く蓄積されます。 鉛の生物学的半減期は血液及び軟組織(肝臓、肺、脾臓、腎臓及び骨髄)で約40日、骨で約20年とされています。

 

Q14:体に入った鉛は、体の外に排泄されるのですか。

A14:消化管から吸収された鉛は主に尿中に排泄されます。消化管から吸収されなかった鉛は主に糞便中に排泄されます。鉛の生物学的半減期は血液及び軟組織(肝臓、肺、脾臓、腎臓及び骨髄)で約40日、骨で約20年とされており、一旦吸収され、蓄積された鉛も、いずれは排泄されます。

 

Q15:体の中の鉛は、胎児や母乳に移りますか。

A15:鉛は胎盤を通過し、胎児のばく露源となります。また、鉛は授乳期の母体から母乳へ移行し、母乳中鉛濃度は母体の血中鉛濃度の10〜30%とされています。そのため、母乳も乳児のばく露源の一つとなります。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「2.体内動態」を参照してください。

 

Q16:鉛に継続的にばく露された場合、どのような影響に関する報告がありますか。

A16:日本人の現在のばく露の程度で、小児の神経行動学的発達、成人の腎機能別ウインドウで外部サイトが開きます等に影響があるとする疫学研究の報告があります。小児では血中鉛濃度1〜2 µg/dL程度で知能指数(IQ)スコアの低下、成人では血中鉛濃度2〜3 µg/dL程度で推算糸球体ろ過量(eGFR)の低下や慢性腎臓病(CKD)有病率の増加との関連が報告されていました。

  • 知能指数(IQ:Intelligence Quotient)とは、知能の水準あるいは発達の程度を測定した検査の結果を表す数値です。平均的なIQは100で、85〜115の間に約68%の人が収まり、約95%の人は70〜130の間に収まります。
  • 血中鉛濃度が0.90〜1.71 µg/dLの集団で、0.33〜0.89 µg/dLの集団と比較してIQスコアの3ポイント以上の低下が認められたとする報告があります。
  • 推算糸球体ろ過量(eGFR:estimated Glomerular Filtration Rate)とは腎機能を表す指標であり、eGFRが60 mL/分/1.73 m2未満である状態が3か月以上持続すると慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)と診断されます。
  • CKDとは、腎障害や腎機能の低下が持続する疾患であり、心筋梗塞や脳卒中、心不全等の心血管疾患や、死亡のリスクを上昇させることが知られています。
  • Q19:「現在の我が国の血中鉛濃度は、問題となるものですか」もご覧ください。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「4.ヒトにおける影響」及び「5.有害影響を及ぼさない血中鉛濃度の検討」を参照してください。

3.評価の結果

Q17:今回の食品安全委員会におけるリスク評価の結論はどのようなものですか。

A17:今回のリスク評価の結論は以下の3点です。

1) 知見の不確実性などから、現時点では、疫学研究データを用いて有害影響を及ぼさない血中鉛濃度を導き出すことは困難であると判断しました。

2) 現在の我が国における平均的な血中鉛濃度は、1 µg/dL程度あるいはそれ以下であり、これは、疫学研究から小児の神経行動学的発達や成人の腎機能等になんらかの影響があると示唆される血中鉛濃度の1〜2 µg/dL程度と近いと考えられました。

3) そのため、今後も、鉛ばく露低減のための取組が必要であると考えられました。

  • 今回の評価では、血中鉛濃度1〜2 µg/dL程度の低濃度であっても、小児の神経行動学的発達や成人の腎機能等になんらかの影響がある可能性が示唆されました。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「5.有害影響を及ぼさない血中鉛濃度の検討」及び「7.まとめ」を参照してください。

 

Q18:リスク評価に当たって、食事からの摂取量ではなく血中鉛濃度を用いて評価したのはなぜですか。

A18:鉛については、食事からのばく露以外にも、大気、土壌、室内塵などからのばく露についても考慮すべき点が、通常の評価とは異なっています。血中鉛濃度は、食事を含めた複数のばく露源から鉛にばく露されているヒトの実態を反映すると考えられています。長期間の鉛ばく露の影響を調べた疫学研究においては、鉛ばく露の指標として血中鉛濃度が幅広く使用されています。また、血中鉛濃度を食事からの鉛摂取量に換算するのは困難であったことから、血中鉛濃度を用いて評価しました。

 

Q19:現在の我が国の血中鉛濃度は、問題となるものですか。

A19:我が国における平均的な血中鉛濃度は、疫学研究の結果からなんらかの影響が示唆される濃度(1〜2 µg/dL)に近いですが、これらの影響は大きな集団を観察し、統計学的に処理をしてようやく差が認められる程度のわずかなものです。血中鉛濃度が1〜2 µg/dLを少し超えたからといって、個人レベルで影響がみられるということではありません。

  • 現在の我が国における平均的な血中鉛濃度は、1 µg/dL程度あるいはそれ以下であると考えられ、疫学研究の結果から小児の神経行動学的発達や成人の腎機能等になんらかの影響が示唆される血中鉛濃度1〜2 µg/dLと近いと考えられました。
  • しかし、これらの影響はかなり低濃度でのばく露によるものであり、疫学研究データを用いて純粋に鉛ばく露のみの影響を評価するのは困難です。この他にも、これらの影響に関する知見には不確実性が伴うことから、鉛による影響と断定することも難しいと考えられます。

 

Q20:今回のリスク評価で難しかったところはどこですか。

A20:血中鉛濃度を食事からの鉛の摂取量に換算できず、また、疫学研究データを用いて有害影響を及ぼさない血中鉛濃度を導き出すことができませんでした。そのため、鉛の耐容摂取量(一生涯にわたって食品から摂り続けても健康に影響がでないと推定される量)を設定できませんでした。

  • 「耐容摂取量」については食品の安全性に関する用語集を参照してください。

 

Q21:なぜ、血中鉛濃度を食事からの鉛摂取量に換算できないのですか。

A21:鉛は環境中に広く分布しているため、日常生活において、食事以外にも、大気や土壌、室内塵などから、鉛にばく露されていると考えられています。
 我が国の現状で、血中鉛濃度を食事からの鉛摂取量に換算するための適切なモデル式がなく、また、換算に使用するデータが不足していると判断されたことから、換算は困難であると結論づけられました。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「6.血中鉛濃度と鉛摂取量との関係」を参照してください。

 

Q22:なぜ、疫学研究データを用いて有害影響を及ぼさない血中鉛濃度を導き出すことが難しかったのですか。

A22:主な理由は以下のとおりです。
○ 複数の疫学研究で一貫した結果がみられなかったこと。
○ 観察された影響はかなり低い血中鉛濃度でのばく露によるものであり、鉛ばく露のみによる影響として評価するのは困難であること。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「5.有害影響を及ぼさない血中鉛濃度の検討」を参照してください。

 

Q23:今回の評価で明確にならなかったところはどこですか。

A23:現在の我が国における平均的な血中鉛濃度(1 µg/dL程度あるいはそれ以下)とした知見に関して、小児については年齢層や地域が限られたデータであり、成人については妊婦又は女性のデータが多かったことから、平均的な血中鉛濃度の数値には、不明確なところが残りました。
 また、1〜2 µg/dLの血中鉛濃度で小児や成人に何らかの影響がある可能性が示唆されましたが、疫学研究のデータから鉛以外の要因による影響の可能性を排除することができないこと等から、本当にこれが鉛による影響と判断してよいかについて、不明確なところが残りました。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「1.ばく露」及び「5.有害影響を及ぼさない血中鉛濃度の検討」を参照してください。

4.今後の課題

Q24:我が国における今後の課題は何ですか。

A24:今後、より精緻なリスク評価を行うために、(1)食事、大気、土壌、室内塵などからの鉛ばく露の状況、(2)血中鉛濃度の状況、(3)低濃度鉛ばく露の影響に関する知見等のような科学的知見の蓄積が望まれます。また、今後も鉛ばく露低減のための取組が必要であるとともに、その効果を確認するために、血中鉛濃度の推移を注視する必要があります。

  • ヒトの集団(多くの場合は国民全体)を代表するサンプルで、血中鉛濃度の推移を経時的に把握することをヒューマンバイオモニタリングと言います。
  • 詳しくは、評価書「鉛」の「II.食品健康影響評価」の「7.まとめ」を参照してください。

 

III. 鉛へのばく露を減らすための対応等

Q25:普段の生活で、食事由来の鉛へのばく露を減らすために気をつけることは何ですか。

A25:これまでの鉛ばく露低減に向けた取組(A26 参照)により、我が国での鉛へのばく露状況は改善しています(A11 参照)。また、現在の平均的なばく露の状況で、個人レベルで影響がみられるということではありません(A9 参照)。よって、普段の生活で、心配しすぎる必要はありません。

    もし、気になるのであれば、食事由来の鉛へのばく露を減らすために、できることとして、以下のようなことがあります。

   ○特定の食品に鉛が多く含まれるという傾向はないので、特に注意が必要な食品はありません。何かを避けるなど、偏った食生活を送るのではなく、バランスのよい食生活を心がけることが大切です。

   ○食品に使用することが想定されていない装飾陶磁器などの器は鉛が溶け出す可能性があるので、食品の器として使用しないようにします。

   ○室内塵に鉛が含まれている可能性があるので、室内を清潔に保つことが大切です。また、室内塵に含まれる鉛が食品に付かないように、食品や食器類、調理器具は外部からの汚染がないように保管します。

   ○土壌などに鉛が含まれている可能性があるので、室内に土ぼこりを持ち込まないようにします。また、土壌などに含まれる鉛が付いているかもしれないので、よく手洗いをし、調理の際には野菜や果物をよく洗います。

   〇水道の給水管に鉛が使われているかどうか給水をうける水道局に確認し、必要に応じて、鉛製給水管の取替などの対策をとります。鉛製給水管の取替までの間、朝1番の水や長期不在であった後に使用する水は鉛の濃度が高くなっていることがあるため、飲用以外に使用します。飲用以外に使用する水量は、概ね10〜15L程度とします。

 

Q26:鉛へのばく露を減らすために、国では今までどのような対策や取組がなされてきたのでしすか。また、今後、どのような対策がなされるのでしょうか。

A26:政府では、これまでに、以下のような対策や取組がなされてきました。今回のリスク評価の結果を受けて、鉛ばく露低減に向けた取組が今後も進められます。

   ○農林水産省では、食品及び飼料に含まれる鉛の含有実態調査を行うとともに、飼料の管理基準の設定を行っています。また、実態調査の結果に応じて、事業者と連携して、鉛汚染の原因究明や低減対策に取り組んでいます。

   ○厚生労働省では、食品衛生法により食品等の規格基準(残留農薬、添加物、清涼飲料水、器具・容器包装、おもちゃ)を定めています。また、水道法により水質基準が定められ、鉛製給水管の取替などを推進しています。

   ○環境省では、環境基本法により環境基準を定めています。また、関係法令により土壌及び大気の汚染や公共用水域及び地下水の汚濁による人の健康に係る被害の防止を図っています。そのほか、大気、公共用水域及び地下水中に含まれる鉛に関する調査を行っています。

  • 詳しくは、評価書「鉛」の別添2「I.評価対象物質の概要」の「3.現行規制等」を参照してください。
  • 厚生労働省における鉛製給水管の対策については、以下をご覧ください。
    厚生労働省: 鉛対策別ウインドウで外部サイトが開きます(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kyusui/01.html)
  • 農林水産省が実施した鉛の実態調査の結果等については、以下をご覧ください。
    農林水産省: 食品中の鉛に関する情報別ウインドウで外部サイトが開きます(https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_pb/index.html)

 

  ※本Q&Aは、消費者庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省の協力をいただき作成しました。