研究情報詳細

評価案件ID cho99920161301
評価案件 ヒト型遺伝子改変マウスを用いた非定型BSEの人に対する感染リスクの定量的評価(研究課題番号1301)
資料日付 2017(平成29)年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  牛海綿状脳症(BSE)の発生は激減したが、定型BSE(C-BSE)とは異なる病態を示す非定型BSEが老齢牛で散発的に発生する。C-BSEは単一の病態で、人に感染して変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の原因とされている。一方、非定型BSEは、L型(L-BSE)とH型(H-BSE)の2タイプが知られており、いずれも人に感染した例はないが、L-BSEについては実験的に人に感染する可能性が示唆されている。我々は、正常なアミノ酸多型を反映したヒトプリオン蛋白質を、内在性のプリオン蛋白質と同程度発現するヒト化マウスを樹立した。
 本研究は、L-BSE、H-BSE、C-BSEの感染牛の脳乳剤をヒト化マウスの脳内、もしくは腹腔内や経口の末梢経路で投与する感染実験を行い、人への感染リスクを評価することを目的とした。
 ヒト化マウスを用いた感染実験で、C-BSEは脳内や腹腔内ルートでヒト化マウス129Met/Met・219Glu/Glu、129Met/Met・219Lys/Lysに感染した。C-BSEが感染したとされる変異型CJDの患者は輸血による1例を除きすべて129Met/Met型であり、219Lys型の症例も1例で報告されことから、ヒト化マウスへの感染性はC-BSE感染における人の正常多型の影響を反映すると考えられた。一方、L-BSE、H-BSEは脳内や腹腔内投与後にいずれのヒト化マウスにも感染しなかったことから、非定型BSEのヒトへの感染リスクは、C-BSEより小さいと考えられた。
 ヒト化マウスへの経口投与実験では、L-BSE、H-BSE、C-BSEいずれも感染しなかった。一方、感受性の高いウシ化マウスへの経口投与実験ではL-BSEやC-BSEは感染した。しかし、ウシ化マウスへの脳内投与後の感染性と比較すると、1/10,000より低い感染効率であった。また、L-BSEは、経口投与によるウシ化マウスへの感染性がC-BSEと比べて1/10、H−BSEは1/100以下であったことから、非定型BSEの経口感染性は少なくともC-BSEと比べて低いと考えられた。
 ヒトの消化酵素を模した人工消化液とその後の100℃、10分間の熱処理では、C-BSEの感染性は全く失われなかった。これに対して、L-BSEやH-BSEは人工消化液でプリオン蛋白質の減少が見られ、100℃、10分間の熱処理で感染性は1/1,000以下に減少した。このことから、非定型BSEのプリオンはC-BSEに比べて非常に不安定であり、不活化し易いことが示された。
 この研究課題では、非定型BSEがヒト化マウスに感染しなかったことから、人への感染リスクを定量的に評価できなかったが、C-BSEの牛からヒトへの感染にはヒトの遺伝子多型がリスクファクターとなりうること、非定型BSEの人への感染性がC-BSEと比べて低いことを明らかにした。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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