研究情報詳細

評価案件ID cho99920131201
評価案件 酸化ストレスを誘導する遺伝毒性物質の低用量における量反応関係の解析(研究課題番号1201)
資料日付 2014年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  生体内での活性酸素種(Reactive oxygen species , ROS)の産生は、電離放射線や様々の化学物質の曝露により増強される。ROSはDNAやその前駆体のヌクレオチドを攻撃し、その結果、DNA上に様々の酸化的塩基の生成を誘導する。これらの修飾塩基の中でも、8-oxo-7,8-dihydroguanine (8-oxoG)は高い変異誘導能を持つDNA損傷である。8-oxoG生成を原因とする変異原性や発がん性を防御する機構には、代謝活性化(酸化)の抑制、損傷乗り越え(translesional)DNA合成やDNAの修復が含まれていることが知られている。
 MUTYHは8-oxoGの反対側に取り込まれたアデニンを除去してDNAを修復するDNAグリコシダーゼであり、哺乳類細胞でG:C to T:A変異の誘導を防いでいる。Mutyh遺伝子欠損マウスに典型的な酸化ストレス誘導剤である臭素酸カリウム(KBrO3)を2 g/Lの用量で16週間飲水投与すると野生型マウスに比べて小腸腫瘍誘発が劇的に増加していたが、より低用量(0.5 g/L)では小腸腫瘍誘発の頻度が殆ど観察されなかった。生体内では、ある用量より低い用量の酸化的ストレス誘導剤の作用により生成されたDNA損傷を正確に修復することが可能であり、そのため腫瘍が誘発され難くなり実質的な発がんの閾値が形成されることが示唆された。
 Nrf2は第Ⅱ相薬物代謝酵素や抗酸化タンパク質の発現に必須な転写因子であり、その遺伝子欠損マウスの臓器ではROS産生の亢進が観察されている。KBrO3を飲水投与し、野生型gpt deltaマウスとNrf2欠損gpt deltaマウスの小腸で示す変異原性を評価した。両者のマウスとも、0.6 g/Lの用量で突然変異体頻度(mutant frequency)は有意に増加し、0.2 g/L がKBrO3による突然変異誘導の実質的閾値と考えられた。野生型gpt deltaマウスでは、用量に依存した8-oxoG産生増加に並行してG:C to A:T 変異頻度の上昇が観察され、酸化的ストレスのレベルが閾値の決定要因である可能性が示された。
 DNAポリメラーゼζ(ゼータ)は損傷乗り越えDNA合成で重要な役割を果たしている。野生型よりもDNAポリメラーゼζの活性が低いヒト細胞D2781N細胞では、KBrO3と他のROS産生剤であるNa2Cr2O7の曝露によるTK(Thimidine kinase)遺伝子変異誘導と小核形成の感受性が高くなり、一方、DNA複製の忠実度が減弱している細胞M2618MではSCE(姉妹染色分体交換)の感受性が高くなっていた。DNAポリメラーゼζは酸化的ストレスによる遺伝毒性の閾値形成に重要な役割を果たしていると考えられた。
 以上の研究より、ROSの産生などの酸化的ストレスによる腫瘍誘発/突然変異誘導の実質的閾値形成には、損傷乗り越えDNA合成やDNAの修復が関与していることが示唆された。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
添付資料ファイル