研究情報詳細

評価案件ID cho99920131101
評価案件 食品を介するリステリア感染症に係わる高病原性リステリア株の評価と生体側の要因を加味した食品健康影響評価に関する研究(研究課題番号1101)
資料日付 2014年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes;LM)は環境に広く分布し、食品からもしばしば分離される。喫食前の加熱処理をしない調理済食品においては、国内の市販食品から平均約2%程度のLMが分離される。日本人は生食が多く調理済食品の種類も多いため、欧米先進国に比べ食品を通じLMに曝される機会は多いと思われる。食品を通じ本菌に曝される機会は多いが、重篤なリステリア感染症を発症する患者は極端に少ない。重篤なリステリア感染症の発症は生体側の免疫との関わりがあり、宿主側の要因が強く働いているためであると理解されている。2004年のFAO/WHOの専門家会議によるLMのリスク評価では、LMの菌株毎の病原性の違いについては未だ科学的に十分解明されておらず、血清型や特定の菌群に関し病原性の違いの有無を言える段階ではないとして、LMを一律同様な扱いとしてリスク評価を行っている。一方、ヒト臨床から分離される血清型は特定の血清型に偏っており、国内のヒト臨床分離株の65%以上は血清型4bであり、食品や環境由来株の血清型の分離頻度の傾向とは明らかに異なっている。
 本研究ではLMの侵入メカニズムが、継代細胞やヒトの腸管に類似している感染モデル動物としてスナネズミを用いてLM菌株の病原性を評価し、高病原性株の存在を明らかにした。血清型4bは高病原性であり、ほぼいずれの株も高病原性と考えて良いと思われた。血清型1/2aと1/2bの検討ではこれらの血清型の一部に高病原性が認められた。一方、食品や環境からしばしば分離されるその他の血清型には、ほとんど病原性が無いと思われた。LMの病原性は一律に考えることは出来ず、血清型4bと血清型1/2a、1/2bの一部の高病原性の菌株をどのようにコントロールするかが重要である。
 また、スナネズミを用いた実験により、あらかじめ少量のLMに曝された場合、その後大量のLMに曝されても感染が軽度で済むことが証明された。すなわち、通常の食品摂取時のような低菌数のLMへの暴露があれば、その後の高病原性のLMの高菌数の暴露に対して、明らかに発症を抑える経口ワクチン効果があることが示された。スナネズミを用いたLMの経口ワクチン効果はヒトにおいても同様に起こっている可能性は高く、このような観点からLMの制御を考えていく必要があることが示された。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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