研究情報詳細

評価案件ID cho99920131203
評価案件 食品のウイルス汚染のリスク評価のための遺伝子検査法の開発と応用に関する研究(研究課題番号1203)
資料日付 2014年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  ノロウイルス(NoV)、A型肝炎ウイルス(HAV)及びE型肝炎ウイルス(HEV)などの食品媒介ウイルスの多くは培養が不可能か困難であることから、その検出は主に遺伝子検査で行われている。遺伝子検査では感染性のないウイルス粒子に由来する遺伝子が検出される欠点があり、食品におけるウイルスのリスク評価を行う上で大きな支障となっている。
 そこで本研究では、食品等の検体から感染性ウイルスを選択的に検出するための遺伝子検査法の開発を試みた。開発した方法は、RNaseによる露出ウイルスRNAの消化及びオリゴdTプライマーによる逆転写反応を行った後、リアルタイムPCR法で遺伝子の定量的検出を行うものである。
 開発法を評価するために、加熱、紫外線照射あるいは次亜塩素酸ナトリウム処理で不活化させたNoV及びネコカリシウイルス(FCV)を用いて、開発法及び従来法による遺伝子定量並びにFCV感染価測定を行った。その結果、いずれの不活化においても、開発法の遺伝子定量値は感染価を完全には反映しなかったが、従来法と比較して感染価をより反映した。同様の結果は、有機物不含または含有条件における、乾燥状態あるいは液体中での実験室内生存性試験あるいは海水中での野外生存性試験においても得られた。また、それらの生存性試験により、NoVは有機物が多い環境で生存性が高くなることや、海水中では夏期より冬期の生存性が高いことなどが明らかになった。
 開発法を下水やカキからのNoV検出に応用した結果、流入水と比較して放流水の中に不活化したNoVがより多く含まれていることや、カキには不活化したNoVが蓄積していることが示された。また、NoVとFCVの生存性は特に下水放流水や海水において異なることも明らかになった。
 一方、抗体被覆ウイルス粒子は非感染性である可能性があることから、抗体被覆ウイルス粒子と抗体非被覆ウイルス粒子の簡便な分別回収法の開発が必要である。
 そこで我々は、プロテインAカラムあるいはパンソルビンを用いた2種類の分別回収法を開発した。両法は、IgG抗体被覆粒子と非被覆粒子の鑑別、またそれらに抗ヒトIgA抗体を添加することにより、IgAまたはIgG抗体被覆粒子と非被覆粒子の鑑別を行うものである。
 両法を患者糞便中のNoV検出に適応した結果、IgA被覆粒子が多いと糞便中のウイルス量が少なくなる傾向があること、小児より大人で抗体被覆粒子が多く存在することなどが明らかになった。HAV及びHEVの加熱不活化実験を行い、それらの不活化条件に関するデータを蓄積した。また、HEV抗原検出ELISA法を確立した。
 以上の結果から、我々が開発した方法は、食品、下水、海水、環境の拭き取りあるいは臨床材料から感染性ウイルスを検出するのに有用な方法であると考えられた。また、本法で得られたデータは食品中のウイルスのリスク評価に大きく寄与するものと思われる。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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