研究情報詳細

評価案件ID cho99920131104
評価案件 ラットにおける遺伝毒性・反復投与毒性併合試験法の開発(研究課題番号1104)
資料日付 2014年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  gpt deltaラットを用いた遺伝毒性・反復投与毒性併合試験法を開発した。試験法の標準化のため、投与期間や系統差を検証し、13週間反復投与による一般毒性検索系としての妥当性を検討した。また、遺伝子改変に伴うゲノムの欠失等の影響を明らかにするため、λEG10の挿入部位を決定した。さらに、加齢に伴う突然変異の蓄積及びクローナル変異体の影響の有無について検討した。
 F344系及びSD系gpt deltaラットにdiethylnitrosamine (DEN) を2~8週間飲水投与した結果、いずれの時点でも最高用量群(10 ppm)で対照群と比較して有意なgpt遺伝子突然変異頻度及びSpi-欠失変異体頻度の上昇が認められた。一方、di(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP)混餌投与群では全ての投与群、全期間で、gpt及びSpi-突然変異頻度は対照群と比較して有意差はなかった。また、gpt deltaラットはF344系、SD系ともに野生型ラットとほぼ同程度の一般毒性を示した。
 F344系gpt deltaラットにDEN を13週間飲水投与した結果、一般状態、血清生化学、臓器重量、病理組織等の一般毒性に野生型ラットとの差異はなく、肝前がん病変であるGST-P陽性細胞は投与群において対照群に比較し有意な高値を示したが、その程度は野生型ラットと同程度であった。DENを5週間腹腔内投与後、phenobarbital (PB)を8週間混餌投与した結果、K-ras遺伝子の変異パターンはgptアッセイの変異スペクトラム解析で明らかとなったgpt遺伝子上の遺伝子変異と一致するものであったことから、gpt遺伝子上の遺伝子変異が、がん遺伝子上の遺伝子変異と相関する可能性が示唆された。
 遺伝子導入によってラットゲノム配列は71
,789 塩基分が欠失し、欠失領域中には1遺伝子が存在した。104週齢の肝臓では19週齢と比較して点突然変異頻度が約3倍有意に高く、肝臓において自然突然変異が加齢に伴い蓄積することが示された。点突然変異に関するシークエンス解析の結果、主な自然突然変異のタイプはCpG部位におけるG:C to A:T変異であった。また、老齢個体において、生体の機能低下によって内因性変異原の増加や修復能の低下が生じ、酸化的DNA損傷等を介してG:C to T:A変異や欠失変異が増加する可能性が示唆された。3系統のgpt deltaラット(SD、F344及びWistar Hannover)について肝臓の突然変異頻度を測定した結果、系統差はみられなかった。
 以上の成績から、レポーター遺伝子導入動物gpt deltaラットにおける臓器レベルでの検索は、遺伝毒性の標的臓器における直接的な関与の証明となる点で優れており、一般の反復投与毒性に加えて遺伝毒性・発がん性をより精緻かつ短期に予測できる可能性が期待できる。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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