研究情報詳細

評価案件ID cho99920121003
評価案件 食品中化学物質への胎生~新生期暴露が情緒社会性におよぼす影響評価手法の開発(研究課題番号1003)
資料日付 2013年3月25日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  食品中化学物質への胎生~新生児期暴露が情緒社会性におよぼす影響評価系を脳神経科学技術を網羅的に駆使して構築することを目的とした。
 情緒社会性行動への影響についてコンセンサスが得られている化学物質(バルプロ酸、エタノール、ニコチンなど)をポジティブコントロール物質として以下の試験系を開発した。化学物質の脳内移行性をin vitroBBBモデルを用いて評価可能にした。化学物質の脳内移行性は年齢依存性があることを発見した。モデルを構成する細胞をヒト細胞に置き換え、ラット細胞モデルで十分にヒト予測性が高いことを明らかとした。胎生~新生期に化学物質に暴露したラットを 4-5 週齢まで生育し、情緒社会性行動の責任脳部位である扁桃体に注目してマイクロアレイ解析によるリスクマーカー遺伝子の同定を試みたところ、有意に変動する遺伝子は存在せず、変動は小さいが情緒社会性に影響が現れるときにまとまって変動する遺伝子群(58遺伝子)があることを見いだした。この 58遺伝子群の変動についてポジティブコントロール物質暴露動物および母子分離条件成育動物の主成分分析(統計解析手法の一種)を行い分離度を数値化したところ、行動解析における異常度と非常に相関が高く情緒社会性リスクを予測できることが判明した。よってこの評価手法を「情緒社会性リスク遺伝子変動指数法」とした。扁桃体の情動制御メカニズムをより直接的に反映する電気生理学的なパラメーターの内、特に重要な 12 種のパラメーターを一挙に記録するため、汎用性の高い電気刺激プロトコルおよび反応を計測・識別するプログラムを開発した。複数のパラメーターに基づく異常検出のため、「有意性カラースケールプロット」、「有意性カラーマッププロット」を開発した。以上の情緒社会性への影響評価に最適化した電気生理学的解析手法をニューロエキシトミクス試験とした。情緒社会性を直接反映する複数の行動薬理学的試験を組み込んだ新たな行動試験法を開発した。各行動試験における拘束ストレス負荷への脆弱性を評価することで高感度化を実現した。
 今後、より多くの化学物質評価を想定した場合、一度に取り扱い可能な被験物質数やデータあたりの時間やコスト、専門装置の必要性、情緒社会性への精度・選択性を鑑みると、in vitro脳内移行性試験、情緒社会性リスク遺伝子変動指数法を 1 次スクリーニングとして化学物質を絞り込み、ニューロエキシトミクス試験および情緒社会性行動試験をフォローアップとして用いることにより、最終的なリスク判定に至る、というフローで評価系を統合することが望ましいと考えられる。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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