食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu05970060535
タイトル 英国毒性委員会(COT)、アクリルアミドの遺伝毒性に関する欧州食品安全機関(EFSA)の2022年評価のディスカッションペーパーを公表
資料日付 2022年12月13日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  英国毒性委員会(COT)は2022年12月13日、アクリルアミドの遺伝毒性に関する欧州食品安全機関(EFSA)の2022年評価のディスカッションペーパーを公表した。概要は以下のとおり。
 当該資料は、2022年12月14日開催予定の会議(COT Meeting)用のディスカッションペーパーであり、COTの意見を反映したものではないことから引用禁止である。
 背景
 欧州委員会(EC)による要請を受けて、EFSAはアクリルアミドの遺伝毒性について最近発表された学術論文に関する声明を公表した。ECによる本要請は、アクリルアミドの遺伝毒性作用に反論するGerhard Eisenbrand氏によるレビュー論文(https://doi.org/10.1007/s00204-020-02794-3、Erratum; https://doi.org/10.1007%2Fs00204-020-02893-1)の発表後に行われた。EFSAはEisenbrand氏の論文は包括的ではないと判断したため、アクリルアミドの遺伝毒性と作用機序に関する最近のデータについて文献検索を行った。
 課題の性質上、EFSAの声明とEisenbrand氏の論文のサマリーは、2022年6月の英国変異原性委員会(COM)で最初に提示された。COMの結論の概要が示されたが、EFSAの政策同僚(policy colleagues)からアクリルアミドに関する完全なリスク評価の実施が求められた。評価結果は2023年の理事会で報告される予定である。
 序論
 アクリルアミドは、低分子量の分子であり、水に良く溶ける有機化合物である。アクリルアミドへのばく露に対する懸念が高まったのは、特定の食品が、湿気の少ない状態で、通常120℃以上の温度で調理される際にアクリルアミドが生成することが明らかになった2002年である。アクリルアミドは、主にフレンチフライ、ポテトチップス、パン、コーヒー等の炭水化物が豊富な食品で、特定のアミノ酸と還元糖の間のメイラード反応によって部分的に生成する。
 アクリルアミドの主要な毒性効果は、遺伝毒性、発がん性、神経毒性、精子数および精子と精巣の形態の変化を含む男性生殖パラメーターへの影響である。
 アクリルアミドは、国際がん研究機関(IARC)によってグループ2A(ヒトに対する発がん性がおそらくある)に分類されている。アクリルアミドは、哺乳類細胞において弱い突然変異誘発物質であり、効果的な染色体異常誘発物質である。CYP2E1(シトクロムP450)の代謝反応によるアクリルアミドのエポキシ化は強い突然変異誘発物質であると同時に、強い染色体異常誘発物質であるグリシドアミドを生成する。グリシドアミドは、DNAとの結合を通して突然変異を誘発する。また、アクリルアミドは酸化ストレスの誘発に続いて、DNA損傷を誘発する可能性がある。
 Eisenbrand氏の論文(2020年)
 EFSA の再評価を促したEisenbrand氏のレビュー論文では、利用可能な科学的エビデンス全体はアクリルアミドの腫瘍効果の基となる遺伝毒性の作用機序を明確に否定していると結論されている。
 当該論文は、さらに、アクリルアミドの内生的生成は食事からの平均的アクリルアミドばく露に近い速さで起こること、グリシドアミドはグルタチオンとの抱合によって食事ばく露レベルにまで完全に解毒されていることを示唆している。
 Eisenbrand氏は、初代ラット肝細胞におけるアクリルアミドのグリシドアミドへの生体内変換はグルタチオンとの連動による解毒化よりもかなり遅いと主張している。
 Eisenbrand氏によれば、ラットでDNA付加物(N7-GA-Gua (訳注 DNAのグアニン塩基の7位窒素原子にグリシドアミドが結合した付加物))の形成には高用量(100 μg/kg体重以上)が必要であり、病変は用量に依存性せず、平均的なばく露用量で散発的にのみ検出されるとのことである。さらに、ラットでは、グリシドアミドが結合したヘモグロビン(Hb)の濃度は正常レベルにとどまっているのに対し、アクリルアミドが結合したHbの濃度のかなりの上昇が報告されている。
 Eisenbrand氏はさらに、毒性ゲノム学(toxicogenomic)研究に基づくげっ歯類の標的器官におけるカルシウムシグナル伝達および細胞骨格機能への影響、げっ歯類の発がん性研究から得られた系統および種に特異的な腫瘍への影響から、ヒトのがん発症リスクが予測できる可能性は低いと主張している。
 Eisenbrand氏は、グリシドアミドを弱い変異原であると考えており、N-ニトロソ化合物、多環芳香族炭化水素、または食品由来の潜在的な変異原/発がん物質などのその他のプロセス関連汚染物質(process-related contaminants)との比較から支持されているとしている。
 Eisenbrand氏は、非遺伝毒性/非変異原性の作用機序はげっ歯類におけるアクリルアミドの腫瘍効果の根底にあるので、耐容一日摂取量(TDI)を定義することができると結論している。したがって、主な悪影響は、実験系とヒトにおけるバイオマーカーに基づくばく露評価によって裏付けられ、考慮されるべきである。
 COMによる討論と結論のまとめ
 COMは、EFSAが評価で考慮した情報/データによって、2015年の意見書のほとんどが確認され、強化されていると判断した。
 ただし、グリシドアミドが変異原であるという十分なエビデンスがあるのに対して、アクリルアミドに対する直接的なエビデンスは明瞭ではなく、グリシドアミドへの代謝物に主に依存していると、委員は指摘した。さらに、委員は2015年意見書で提起された不確実性のギャップを埋めるために必要なデータが依然として不足していることも指摘した。委員は、重要な種(relevant species)を用いてベンチマークドース効果が特定できるようなレベルでの研究を望んでいる。さらに、内因性レベルに関する不確実性も残っている。
 委員は、Eisenbrand氏による論文は引用研究の選択/レビューのアプローチに詳細が不足していること、すべてのエビデンスの検討よりもむしろ特定のエビデンス(例えば、1つの特定のDNA付加物に関するエビデンス)を検討しているように思えることを指摘した。全般的に、COMはばく露マージンによるアプローチは適切であるとのEFSAの結論に同意した。そして、2015年意見書の更新は現時点では必要ないと結論した。
 まとめ(抜粋)
 ECの要請に基づいて、EFSAはアクリルアミドの遺伝毒性に関する意見書を再評価した。本要請は、アクリルアミドの発がん性に対する遺伝毒性作用機序に反論するEisenbrand氏による論文によって促された。EFSAはEisenbrand氏の論文は包括的ではないと考え、2015年の評価から2021年までの文献検索を行った。利用可能なエビデンスの精査の結果、アクリルアミドの遺伝毒性に関する2015年意見書を支持し、ばく露マージンによるアプローチは適切であると結論した。
地域 欧州
国・地方 英国
情報源(公的機関) 英国毒性委員会(COT)
情報源(報道) 英国毒性委員会(COT)
URL https://cot.food.gov.uk/Discussion%20paper%20on%20EFSA%E2%80%99s%202022%20Assessment%20of%20the%20genotoxicity%20of%20acrylamide
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