【読み物版】食品用器具及び容器包装に関する食品健康影響評価指針 その2 2020年3月31日配信

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[食品用器具及び容器包装に関する食品健康影響評価指針 その2]
2020年3月31日 配信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今号のe-マガジン【読み物版】は、前号に引き続き、「食品用器具及び容器包装に関する食品健康影響評価指針」についてです。
前号では、評価指針を策定した背景と評価の考え方を紹介しました。食品用器具及び容器包装(以下、「器具・容器包装」)の評価は、器具・容器包装から食品へ移行する全ての物質に対して一律に全ての試験の結果を求めるのではなく、食品へより多く移行するものには、より多くの試験結果を求めるという考え方で行います。
今号は、評価の4つのステップ「移行の評価」、「毒性の評価」、「ばく露量の評価」及び「リスクの判定」の概要を紹介します。

※食品用器具及び容器包装に関する食品健康影響評価指針(2019年5月)も併せてご覧ください。
http://www.fsc.go.jp/hyouka/index.data/kiguyouki_syokuhinkenkoueikyouhyoukashishin_20190528.pdf[PDF形式]PDFファイルを別ウインドウで開きます

━━━━━━━━━━━
1.移行の評価
━━━━━━━━━━━
「移行の評価」ステップでは、溶出試験の結果をもとに、合成樹脂の原材料などが食品に移ってしまう量(移行量)を調べ、食事中濃度(ヒトが一日当たりに食べる食事中の濃度の推定値)を算出します。そして、評価指針に定める食事中濃度の4つの区分(区分I、II、III及びIV)のどれに該当するかを判断します。
溶出試験では、合成樹脂製の試験片を、使用対象の食品と物理的・化学的に似た性質をもつ溶媒(食品擬似溶媒)に浸けて、溶媒に移行する物質の種類とその濃度を調べます。食品の種類は、その物理的・化学的な性質を考慮して6つの群(通常の食品、乾燥食品、酸性食品、酒類、乳・乳製品、油脂及び脂肪性食品)に分けます。例えば「通常の食品」の場合は蒸留水を、「酒類」の場合は20%エタノールを食品擬似溶媒として設定しています。また、器具・容器包装の使用条件を考慮して、溶媒の温度や溶出時間を適切に設定します。
食事中濃度を算出する時は、溶出試験で得られた最大の濃度を用います。しかし、より実態に近い濃度を推定するために、合成樹脂の使用の実態(どの種類の合成樹脂が、どの食品群にどれぐらい使われているか)も考慮します。この算出値と以下の濃度の範囲を比較して、食事中濃度がどの区分に該当するかを判断します。なお、食事中濃度は食事1 kgあたりの対象物質量(mg)で示します。
区分I:0.0005 mg/kg以下
区分II:0.0005超〜0.05 mg/kg以下
区分III:0.05 超〜1 mg/kg以下
区分IV:1 mg/kg超

なお、食事中濃度区分の各区分間の境界値は、国際的に合意されている毒性の閾値に関する考え方などに基づき設定しました。

━━━━━━━━━━━
2.毒性評価
━━━━━━━━━━━
「毒性評価」ステップでは、食事中濃度区分の各区分に定めた毒性試験などの結果やその他利用可能な情報に基づいて、評価の対象物質の毒性の特徴などを評価します。食品への移行の程度が大きくなるのに応じて、より多くの種類の試験結果を求めます。
具体的には、各区分に関して必須の内容が定められています。

区分I:遺伝毒性に関する利用可能な情報
区分II:遺伝毒性試験の結果
区分III:遺伝毒性試験、亜慢性毒性試験の結果
区分IV:遺伝毒性試験、亜慢性毒性試験、生殖毒性試験、発生毒性試験、慢性毒性試験、発がん性試験、体内動態試験の結果

なお、必須として定めるもの以外についても利用可能な情報があれば、その情報も評価に活用します。また、別途考慮を要する一部の毒性(神経毒性、免疫毒性など)についても、評価に当たって適切に検討します。

━━━━━━━━━━━
3.ばく露量の評価
━━━━━━━━━━━
「ばく露量の評価」ステップでは、「1.移行の評価」で得られた食事中濃度と日本人の食事摂取量及び体重を用いて、評価の対象物質の一日ばく露量(食品を食べることで摂取する量)を推計します。
食事摂取量と体重は、原則として国民平均の値(評価時点の最新の値)を用います。しかし、器具・容器包装の使用方法や毒性試験の結果から、ばく露量や毒性に対する感受性が高いヒト集団(例えば、乳幼児、妊婦)が想定される場合は、それらの集団に着目したばく露量も推計します。

━━━━━━━━━━━
4.リスクの判定
━━━━━━━━━━━
「リスクの判定」ステップでは、「2.毒性評価」と「3.ばく露量の評価」の結果をもとに、評価の対象物質のリスクを判定します。
食事中濃度区分が区分I又はIIの場合、遺伝毒性に関する情報及び試験結果に基づき判定します。例えば、原材料として意図的に使用される物質に遺伝毒性が認められた場合は、原則としてその使用を許容するべきではない、と評価します。
区分III又はIVの場合、遺伝毒性に加えて、他の毒性試験も評価し、許容一日摂取量(ADI)などと一日推定ばく露量を比較し、リスクの程度を推定します。例えば、一日推定ばく露量がADIを下回る場合は、一般的に健康へのリスクの程度は低いと推定します。

━━━━━━━━━━━
5.まとめ
━━━━━━━━━━━
食品安全委員会は、器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入に対応するため、制度施行後に新しく原材料として使用される物質(新規物質)を対象とした評価指針を策定しました。その際、器具・容器包装から食品へ移行する物質の特性や評価方法の国際整合も考慮して、より多く移行するものにはより多くの試験結果を求めるという考え方に基づき、食品への移行量に応じて評価に必要な毒性試験などを定めました。今後、本指針に基づき、新規物質のリスク評価を行います。また、国際的なリスク評価の動向、科学の進展なども注視しつつ、必要に応じて本指針を改定する予定です。

食品安全委員会は、食品健康影響評価書や評価指針を読む際の助けとなるように、「食品の安全性に関する用語」を整理し、用語集としてまとめていますので、ぜひご活用ください。
http://www.fsc.go.jp/yougoshu.html

--------------------------------------------------------------------------------
食品安全委員会では、タイムリーな情報をFacebookやブログで配信しております。
ぜひご覧ください。
http://www.fsc.go.jp/sonota/sns/facebook.html
http://www.fsc.go.jp/official_blog.html
==================================================
※このメールはシステムが自動発行しておりますので、返信メールは受け付けておりません。
■食品安全委員会e-マガジンバックナンバー
http://www.fsc.go.jp/mailmagazine_back_number.html
■配信登録はこちら
[ウイークリー版+読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao013/subscribe.php別ウインドウで開きます(外部サイト)
[読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao014/subscribe.php別ウインドウで開きます(外部サイト)
[新着メール]
https://www.fsc.go.jp/newsreader/create
■配信解除はこちら
[ウイークリー版+読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao013/unsubscribe.php別ウインドウで開きます(外部サイト)
[読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao014/unsubscribe.php別ウインドウで開きます(外部サイト)
[新着メール]
https://www.fsc.go.jp/newsreader/cancel
==================================================
[食品安全委員会e-マガジン]
編集:食品安全委員会e-マガジン編集会議
発行:内閣府食品安全委員会事務局情報・勧告広報課
〒107-6122 東京都港区赤坂5-2-20
赤坂パークビル22階