【読み物版】生活の中の食品安全 - カンピロバクターによる食中毒について - その1 平成30年8月17日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −カンピロバクターによる食中毒について− その1]
平成30年8月17日 配信
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食品安全委員会では、今年5月、「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル(※)〜 鶏肉等におけるCampylobacter jejuni/coli 〜」を公表しました。そこで、今月のe-マガジン【読み物版】では、カンピロバクターによる食中毒について、症状や原因、予防のポイント、また改訂したリスクプロファイルの内容等を、2回にわたってお届けします。ぜひ、食中毒の防止に役立ててください。

※リスクプロファイル:リスク評価の基礎となるもので、微生物等のハザード(危害要因)の特性や健康被害の発生状況、講じている対策等、科学的な情報を収集した後、収集した情報より問題点を抽出し、今後の課題等をまとめた資料

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1.カンピロバクターとは
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カンピロバクターは、哺乳類や鳥類の消化管、生殖器、口の中に広く分布する細菌です。特に、鶏の保菌率は、他の動物と比べて非常に高くなっています。また、多くの種類がありますが、食中毒の原因となる主なものは、カンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリです。
一般的に、空気、乾燥、熱に弱く、このような環境においては速やかに死滅します。5〜10%酸素存在下でのみ増殖するため、空気中(酸素濃度約21%)では生存できません。また、温度を見ると、31〜46℃で増殖し、例えば、カンピロバクター・ジェジュニは、鳥類の体温帯である42℃程度で最もよく増殖します。なお、他の食中毒菌と異なり、鶏肉等の食材の中で増殖することはほとんどありません。

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2.発生状況及び症状等
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◇発生状況◇
厚生労働省の食中毒統計によると、過去10年のカンピロバクターによる食中毒は、以下のとおりです。年間、おおよそ事件数300件、患者数2,000人で推移しており、2017年の病因物質別事件数では、第1位となっています。

事件数(件) 患者数(人) 死者数(人)
2008 509 3,071 0
2009 345 2,206 0
2010 361 2,092 0
2011 336 2,341 0
2012 266 1,834 0
2013 227 1,551 0
2014 306 1,893 0
2015 318 2,089 0
2016 339 3,272 0
2017 320 2,315 0

◇症状等◇
症状として、汚染された食品を食べてから1〜7日(平均3日)で、主に下痢、腹痛、発熱等が認められますが、多くは自然治癒します。予後も良好で、特別な治療を要しない場合が多いです。
しかし、海外では、高齢者又は他疾患を併発している者で致死となった事例の報告があります。(国内では、食中毒統計上のカンピロバクター食中毒による死亡例は認められていません。)
また、合併症としては、ギラン・バレー症候群(※)等を引き起こすことがあります。

※ギラン・バレー症候群
急激に手足の筋力が低下し、症状が進行する末梢性の多発性神経炎

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3.主な原因食品
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主な原因食品は、以下のとおりです。

◇2017年の原因食品判明事例(推定を含む)◇
・鶏レバー串及びささみチーズ串
・焼鳥を含む食事
・鶏のレバテキを含む食事
・鶏レバー串焼きを含む鶏串焼き
・ささみのカルパッチョ(推定)(※1)
・鶏刺盛合せ、鶏胸肉(※1)
・鴨の生ハム、スモークチキンのサラダ(コース料理)
・鶏のお造り盛合せ(ささみ、ずり、きも)(コース料理)(※1)
・鶏のむね肉のカルパッチョ(コース料理)(※1)
・鶏レバー焼き(推定)  等
(※1)は、生で提供されたと思われる食品

なお、厚生労働省の集計によれば、約9割は、生又は不十分な加熱により提供された鶏肉等(推定含む)と報告されています(※2)。
(※2)平成29年4月1日以降発生した事例のうち、平成30年2月23日までに発症、且つ原因施設が判明した事例において、都道府県等の報告(詳報)を受領した事例(事件数133件、患者数930名 ※平成30年2月23日時点詳報受領分を集計)

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4.食中毒予防のポイント
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カンピロバクターによる食中毒予防のポイントは、「やっつける」「つけない(二次感染を予防する)」ことです。カンピロバクターは、数百個程度と比較的少ない菌量であっても食中毒になると言われています。また、現状ではフードチェーン(生産から消費に至るまでの行程)の途中で取り除くことが難しく、通常の方法で処理された鶏肉は、一定の割合でカンピロバクターに汚染されていると考えられています(参考参照)。鶏肉が新鮮かどうかは関係ありません。以下を参考に、ぜひご自身でも食中毒の予防に取り組んで下さい。

◇カンピロバクターによる食中毒予防のポイント◇
【やっつける!!】
・食肉は十分に加熱(中心部を75℃以上、1分間以上)する
【つけない!!(二次感染を予防する)】
・生の鶏肉を調理した後は、手指や調理器具をよく洗う
・調理器具や食器は、熱湯で消毒し、よく乾燥させる
・保存時や調理時に、肉と他の食材(野菜、果物など)との接触を防ぐ

(参考)流通・販売段階での汚染の実態
・市販鶏肉におけるカンピロバクター属菌汚染状況(※1): 69.7%(33検体中23検体)
・鶏肉からのカンピロバクター検出率(※2):
  もも肉 75.0%(20調査中15陽性)
  ささみ 40.0%(20調査中 8陽性)
  手羽先 71.4%(21調査中15陽性)
  レバー 50.0%( 2調査中 1陽性)
  砂肝  87.5%( 8調査中 7陽性)
※1 飯田奈都子、渡邉朋恵、佐原啓二、川森文彦:食品保存環境におけるカンピロバクターの生残性に関する研究(静岡県環境衛生科学研究所報告2012;55:21-25)
※2 嶋智子、磯部順子、嶋一世、金谷潤一、木全恵子、綿引正則、佐多徹太郎、出村尚子:富山県における市販鶏肉のカンピロバクターおよびサルモネラ属菌汚染実態調査(富山県衛生研究所年報 平成23年度2012;35:120-123)

●次号(平成30年8月31日配信予定)では、5月に改訂したリスクプロファイルの内容をお届けします。

≪参考≫
・みんなのための食品安全勉強会資料(平成30年7月開催)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180713ik1
・報道関係者との意見交換会資料(平成30年7月開催)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180709ik1
・食品健康影響評価のためのリスクプロファイル 〜 鶏肉等におけるCampylobacter jejuni/coli 〜平成30年5月改訂)
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/180508CampylobacterRiskprofile.pdf[PDF:1.78MB]

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