【読み物版】 [ 「薬剤耐性菌」について知ろう その2] 平成28年11月25日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】 [「薬剤耐性菌」について知ろう その2 ]
平成28年11月25日配信  
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前回のe-マガジン【読み物版】では、「薬剤耐性菌」に関する基本的な情報をお届けしました。今号では、食品安全委員会が行っている薬剤耐性菌の食品健康影響評価の概要について解説いたします。

 

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3.  薬剤耐性菌と食品
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抗菌剤は、動物用医薬品 (抗菌性動物用医薬品) 、家畜用の飼料添加物(抗菌性飼料添加物)として使用されています。これによって選択される (抗菌剤が効かない細菌が生き残り、増えること) 薬剤耐性菌が、動物の治療効果を減弱させるほか、食肉、養殖魚肉、鶏卵などの食品を汚染し、それらの食品を介して、私たちが薬剤耐性菌を摂取する可能性があります。
動物に対する抗菌剤は、ヒトの医療で新しく承認された抗菌剤は使用しないなど法令に基づいて限定的に使用されています。
■抗菌性動物用医薬品; 病気の治療に使用。医薬品医療機器等法に基づき、農林水産大臣が承認。家畜・養殖魚用についての新たな承認は、食品安全委員会によるヒトの健康への影響評価が条件の一つ。
■抗菌性飼料添加物; 飼料中の栄養成分の有効利用により、家畜の健全な発育を促すために使用。飼料安全法に基づき、効果及び安全性が確認されたものの中から必要最小限の範囲で農林水産大臣が指定。新たな指定は、食品安全委員会によるヒトの健康への影響評価が条件の一つ。

 

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4.  食品安全委員会の評価指針
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食品安全委員会は、2003年12月、農林水産省から、動物用医薬品又は飼料添加物として使用される抗菌剤によって選択される薬剤耐性菌について、食品を介してヒトの健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価することを求められました。
そこで、当委員会は「薬剤耐性菌に関するワーキンググループ」を設置して、薬剤耐性菌の評価指針 (ガイドライン) を策定の上、それに基づき各剤を評価しています。(家畜等への抗菌性物質(※1)の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針 (※2))。

 ※1; 細菌を始めとする微生物に対して抗菌活性 (殺菌作用、静菌作用など) を示す化学物質で、抗生物質及び合成抗菌剤を言う。(薬剤を指す場合は「抗菌剤」あるいは「抗菌薬」と言う。)
 ※2; 食品安全委員会ホームページ
 https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/index.data/taiseikin_hyoukasisin.pdf

 

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5.  評価指針が示す評価の流れ
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評価指針の示す評価の流れは、次のとおりです。
■(A) ハザードの特定; 既知の情報等から、家畜等に動物用抗菌性物質を使用した結果として選択され、食品を介してヒトの健康に対して危害因子となる可能性のある薬剤耐性菌を特定する。
■(B) 発生評価; 農場や養殖場で薬剤耐性菌が選択される可能性とその程度を評価する。
■(C) ばく露評価; ヒトが畜水産物を介して薬剤耐性菌を摂取する可能性とその程度を評価する。
■(D) 影響評価; 薬剤耐性菌を摂取したヒトが感染症にかかった場合に、抗菌剤の効き目が弱くなったり、あるいは無くなったりする可能性とその程度を評価する。
■(E) リスクの推定; (B)、(C)及び (D)の評価をもとに、その薬剤耐性菌のリスクを総合的に評価する。

 

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6.  これまでに評価した抗菌剤
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食品安全委員会では、農林水産省からの諮問に応じて、様々な抗菌剤について、 (1) 食肉や養殖魚を介して薬剤耐性菌をヒトが摂取した場合、どのような、そしてどの程度のリスクがあるのか、 (2) 病気が発症した場合には、その菌に対して治療薬(ヒト用抗生物質)の効き目がどの程度弱くなったり、あるいは無くなったりするかなどの可能性及び程度などについて、これまで20件の評価を行ってきました (※)。

  ※ フルオロキノロン剤(牛及び豚用、鶏用)、ツラスロマイシン製剤(豚用)、塩酸ピリルマイシン製剤(牛用)、ガミスロマイシン製剤(牛用)、セフチオフル製剤(牛及び豚用)、ツラスロマイシン製剤(牛用)、硫酸セフキノム製剤(牛及び豚用)、フロルフェニコール製剤(牛及び豚用)、モネンシシンナトリウム、ノシヘプタイド、センデュラマイシンナトリウム、ラサロシドナトリウム、サリノマイシンナトリウム、ナラシン、フラボフォスフォリポール、アビラマイシン、エンラマイシン、バージニアマイシン

 

なお、農林水産省では、各抗菌剤のリスクの程度に応じて、対象とする病気をさらに限定するなどのリスク管理措置を強化したり、抗菌剤を使用する際に薬剤耐性菌の選択を最小限に抑えるように使用する「慎重使用」を進めています。さらに、家畜での薬剤耐性菌の動向及び動物用抗菌性物質の使用量を把握するための、全国的なモニタリング (JVARM;Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring system)  を行っています。

 

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7.  終わりに
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2010年、食品安全委員会の牛及び豚用のフルオロキノロン剤の評価の結果を受けて、農林水産省はモニタリングの強化や二次選択薬としての使用の徹底を行っています。
これまでの食品安全委員会で実施した薬剤耐性菌の評価では、各抗菌性物質に対する家畜由来細菌の耐性率は低いと評価されているものがほとんどですが、今後とも、モニタリングや慎重使用により、問題の発生を予防することが重要です。

 

≪参考≫
食品安全委員会:「薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報」
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.html
農林水産省;「家畜に使用する抗生物質について」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/koukinzai.html別ウインドウで開きます(外部サイト)
「薬剤耐性菌(AMR)対策アクションプラン」(首相官邸ホームページ)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/pdf/yakuzai_honbun.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)

 

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