【読み物版】[塩と健康 〜あなたの塩分摂取量は大丈夫?〜 その1] 平成28年5月26日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[塩と健康 〜あなたの塩分摂取量は大丈夫?〜 その1]
平成27年5月26日配信 
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今月のe-マガジン【読み物版】は、2015年度の「食品を科学する−リスクアナリシス(分析)連続講座」の中から、「塩と健康〜あなたの塩分摂取量は大丈夫?〜」(平成27年11月実施)をお送りします。また、次号では、Q&Aを予定しています。

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1.「塩」と塩化ナトリウム
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「塩」とは、塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする調味料のことを言います。海水あるいは岩塩からの精製によって生産されます。海に囲まれた日本では、昔から、海水から塩をつくっていました。塩の販売については、かつては専売制でしたが、現在は自由化されています。このため、国産はもとより世界各地から輸入された様々な塩が流通しています。
法律(塩事業法)による定義では、「塩」とは、塩化ナトリウムの含有割合が40%以上の固形物をいいます。
実際に市販されている塩は、塩化ナトリウムの含有割合が90%以上のものが多く、ほかに、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどが微量に含まれています。
市販されている塩には、精製度が低いものもあり、そうしたものは、カルシウム、マグネシウム、カリウムの含有割合が高くなっています。

■減塩タイプの塩に関して
いわゆる減塩タイプとされる塩のなかには、ナトリウムの摂取を減らすために塩化ナトリウムの含有割合を50%以下にとどめ、その分カリウムの含有割合を高くしているものもあり、「減塩塩」、「減塩しお」などと呼んで市販されています。しかし、腎臓の良くない方は、心臓障害などを起こす可能性があることから、カリウムの摂取を制限しなければならない場合があり、注意が必要です。

 

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2.塩分(塩化ナトリウム)の役割
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私たちが摂取した塩分(塩化ナトリウム(NaCl))は、体内でナトリウムと塩素とに分かれて吸収されます。
ナトリウムの体内分布は、その約50%が「細胞外液」と呼ばれる細胞の外側にある液体(主に血液中で液状の成分である血漿(けっしょう))に存在し、次いで約40%は骨に含まれています。
ナトリウムが私たちの体内で果たしている主な役割は二つあります。
一つは、細胞の浸透圧を維持するということです。細胞外液に多く含まれるナトリウムは、細胞内の体液に多く含まれるカリウムとバランスを取って細胞内外の浸透圧を常に一定に保っています。これによって、体の中の何十兆もの細胞が正常な状態を保っています。
もう一つは、神経伝達や心筋(心臓の筋肉)の収縮に対する働きです。具体的には、神経細胞の外部のナトリウムイオンと内部のカリウムイオンの両者の働きにより電流が生じ、刺激が伝達されます。こういった神経の活動、心臓の収縮は微小な電位の変化となり、これを捉えることにより心電図や脳波が測定できます。
また、塩素もナトリウムとともに細胞外液にあって浸透圧の調整に作用するほか、胃液として食物の消化を助ける等の働きをしています。

 

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3.ナトリウム摂取と高血圧
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高血圧と診断される人の95%は「本態性高血圧」といって、原因不明の高血圧です。
残りの5%は続発性あるいは二次性の高血圧で、原因がはっきりしており、その原因を取り除けば治ります。
本態性高血圧の原因は、塩分(特にナトリウム)の過剰摂取がその一つとされており、ほかにも、肥満、飲酒、その他の生活習慣要因、遺伝的体質など、様々な要因が考えられています。
ナトリウムの過剰摂取による高血圧により、心血管病、脳卒中、心筋梗塞あるいは慢性腎疾患となるリスクが増加すると考えられています。
このような高血圧に起因する病気を予防するためには、ナトリウムの摂取を抑制することが必要ではないかと言われています。
一方で、過度の減塩(1日当たり3g以下)は健康障害を引き起こすという疫学的研究があります。過剰摂取とともに過度の減塩も健康障害をもたらす場合があることに留意しましょう。

 

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4.食塩摂取の目標量
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日本人の1日当たりの「食塩」の摂取量は、男性11.4g、女性9.4gとなっています(平成23年の国民健康・栄養調査)。食塩の1日当たりの摂取基準(食塩相当量)は、18歳以上の場合、男性8g未満、女性7g未満が目標量です(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年)」)。
外国における1日当たりの食塩摂取量をみると、例えば米国では、男性10.7g、女性7.6g、スウェーデンでは、男性9g、女性7gとなっており、WHO(世界保健機関)では、成人の場合、1日当たり5g未満の摂取が望ましいとしています。
また、「うま味調味料」は、グルタミン酸ナトリウムなどを成分としており、1g当たり、おおむね120mgのナトリウムが含まれており、これは、食塩相当量で約0.3gとなります。このように食塩を含まない食品であっても、ナトリウムの摂取源となる場合があります(「日本うま味調味料協会HP」等参考)。
なお、身近な食べ物の食塩量は、おおよそで次のとおりです(女子栄養大学「食品の塩分が一目でわかる塩分早わかり」等参考)。
 (みそ汁1杯:1〜2g)、(インスタントスープ1袋:1.2g)、(ラーメン1杯:5〜7g(汁を残せば2〜3g))、
(カレーライス1人分:3〜4g)、(スパゲティ1人分:2.5〜3g)、(ハンバーガー1個2.2g)

 

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5.まとめ
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食塩は、私たちの体の健康の維持のためにはなくてはならないものです。反面、過剰な摂取は高血圧につながり、高血圧は種々の健康障害をもたらします。
私たちは、現在、平均的に1日に10〜11g程度の食塩を摂っており、目標値(7〜8g)を上回っています。
一方、カリウムの摂取は、ナトリウムの代謝にとって拮抗的に働くことから、それを多く含む野菜や果物の摂取はナトリウムの排泄を増やすことになりますので、バランスの良い食事をとることが大切です。


・食品安全委員会;「食品を科学する−リスクアナリシス(分析)連続講座」 第4回「塩と健康〜あなたの塩分摂取量は大丈夫?〜」
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20151105ik1

・厚生労働省;「日本人の食事摂取基準」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/syokuji_kijyun.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

 

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