【読み物版】 食の安全ダイヤルQ&A その1  平成27年10月23日配信

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 内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】

[食の安全ダイヤルQ&A その1]平成27年10月23日配信
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食品安全委員会の「食の安全ダイヤル」では、国民の皆さんから、食の安全に関する質問などを電話やメールでお受けし、回答しています。
今月のe-マガジン【読み物版】では、「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問の中から、問い合わせの多いものや関心が高いと思われるものをご紹介します。今号は、トランス脂肪酸、食品添加物、リステリア菌、ノロウイルスについてお送りします。

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「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問
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Q1  トランス脂肪酸はどのようなものでしょうか?また、食品添加物ですか?
Q2  トランス脂肪酸は健康に影響を及ぼすものなのでしょうか?
Q3  最近、トランス脂肪酸を米国が規制したと聞きました。日本の対応について教えてください。
Q4  加工食品中の食品添加物の安全性について教えて下さい。
Q5  乳製品はリステリア菌に汚染されている可能性があるので、妊娠中は避けたほうが良いと聞きました。リステリア菌について教えてください。
Q6  ノロウイルスの感染が広く報じられていますが、ノロウイルスによる食中毒の現状を教えてください。
Q7  ノロウイルスによる食中毒の予防法を教えてください。


【トランス脂肪酸について】
Q1  トランス脂肪酸はどのようなものでしょうか?また、食品添加物ですか?
A1  トランス脂肪酸とは、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングの原料として幅広く使われている「部分水素添加油脂」などに含まれています。
「部分水素添加油脂」(Partially Hydrogenated Oils =PHOs)とは、大豆やなたね、やしなどから得られた液体の油に、部分的に水素を添加して、半固体又は固体にした油脂(硬化油)のことで、その添加の際、トランス脂肪酸が生じます。また、植物油を脱臭するための高温処理でも、発生します。
トランス脂肪酸自体は、食品添加物ではなく、食品に意図的に添加されるものではありません。

Q2  トランス脂肪酸は健康に影響を及ぼすものなのでしょうか?
A2  トランス脂肪酸は、過剰に摂取すると、心筋梗塞や狭心症などを増加させる可能性が高いとされ、世界保健機構(WHO)は、その摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるように推奨しています。
日本、ドイツ、英国等では、トランス脂肪酸の摂取量はWHOの目標値を下回っていることから健康への悪影響はないとされており、日本やEUではトランス脂肪酸の表示を義務付けていません。さらに、トランス脂肪酸の健康への影響が注目されて以降、食品産業事業者によってトランス脂肪酸を減らす自主的な取組が行われています。
脂質は重要な栄養素であり、極端な摂取制限は健康に悪影響を与えます。一方、脂質に偏った食生活となっている人も注意が必要です。特定の食品に偏った食生活にならないように気を付け、バランスのとれた食生活を送ることが大切です。

Q3  最近、トランス脂肪酸を米国が規制したと聞きました。日本の対応について教えてください。
A3 本年(2015年)6月、米国のFDA(食品医薬品庁)は、「部分水素添加油脂」を、3年後に「GRAS」(従来から使われており安全が確認されている物質)ではなくすることを発表しました。規制の対象は、一部で報道されているトランス脂肪酸ではなく「部分水素添加油脂」であり、その規制の内容も、全面禁止ではなく、従来自由に使用できたものを3年後に申請承認制にするというものです。
そもそも、米国では、トランス脂肪酸の摂取量がWHOの目標値(総エネルギー摂取量の1%未満)を上回っています。
食品安全委員会では、2012年にトランス脂肪酸のリスク評価(食品健康影響評価)を行い、日本人のトランス脂肪酸の摂取量の平均値は総エネルギー比0.3%程度であり、日本人の大多数がWHOの目標を下回っていることから、日本の通常の食生活では健康への影響は小さいとしました。しかし、脂質に偏った食事をしている人は、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要があるともしています。
なお、トランス脂肪酸を減らすために、原料である油に部分的に水素添加するのではなく、完全に水素添加すると、飽和脂肪酸ができます。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、飽和脂肪酸の摂取基準を7%以下(エネルギー比)としており、日本人の一部は、既にこれを超えていることから、飽和脂肪酸 の摂取量が増えると新たな問題が生じる可能性があります。

・食品安全委員会:「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書の概要
https://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_gaiyo.pdf
・食品安全委員会:「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書に関するQ&A
https://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_qa.pdf
・FDA(米国食品医薬品庁):今回の措置に関する情報
http://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/FoodAdditivesIngredients/ucm449162.htm別ウインドウで開きます(外部サイト)

 

【食品添加物の安全性について】
Q4  加工食品中の食品添加物の安全性について教えて下さい。
A4  食品添加物は、食品を製造する時、添加するものであり、保存料、甘味料、着色料、香料などがあります。
食品添加物の安全性は、動物を用いた毒性試験結果等のデータに基づいて、食品安全委員会が、科学的にリスク評価(食品健康影響評価)を行い、物質ごとに、健康への悪影響がないとされる「許容一日摂取量」(ADI)を設定しています。
この結果に基づき、厚生労働省が、ADIを超えないように使用基準を設定するなどした上で、使用できる食品添加物を指定しています(2015年9月18日現在で449品目)。指定されていない添加物は、原則として使用できません。さらに、厚生労働省は、指定した添加物について、一人当たりの摂取量を調査し、ADIよりもかなり低いことを確認しています。なお、例外的に、指定を受けずに使用できる食品添加物があります。長い食経験がある既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物(いちご果汁など、一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるもの)の3種類であり、これらは、一般に安全性に問題がないと考えています。

・食品安全委員会:「食品添加物のリスク評価」
https://www.fsc.go.jp/sonota/15gou_2_3.pdf
・厚生労働省:「食品添加物」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/別ウインドウで開きます(外部サイト)

 

【リステリア菌について】
Q5  乳製品はリステリア菌に汚染されている可能性があるので、妊娠中は避けたほうが良いと聞きました。リステリア菌について教えてください。
A5  リステリア菌は、4℃以下の低温や、10%の濃い食塩濃度でも増殖できるので、冷蔵庫や塩漬けの過信は禁物です。一方、65℃以上・数分の加熱で死滅します。
海外では、未殺菌乳、未殺菌乳で作られたナチュラルチーズ、 野菜、食肉加工品などの、加熱しないで食べる食品を原因とした集団食中毒の発生事例があります。我が国では、食中毒統計上、リステリア菌が食中毒の原因として報告された事例はありません。
食品安全委員会では、健康な人であれば、非常に多くの菌数を口にしない限り、リステリア菌による食中毒を発症するリスクは極めて低いと評価しています(2013年)。しかし、高齢者を含め免疫力の低下している人(抗がん剤治療中の方やHIVエイズの方など)や妊娠中の人はリステリア菌に感染しやすく、早産や流産の原因になる場合があります。
特に、妊娠期間中は、調理の際に食材を十分に加熱するなど、一般的な食中毒予防に気を付け、未殺菌乳を原料とするナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンなど、加熱しないで食べる食品を避けることも必要です。
なお、国内で生産されるチーズ等の乳製品は殺菌乳から作られており、リステリア菌汚染の可能性は、極めて低いと考えられます。

・食品安全委員会:「リステリアによる食中毒について」
https://www.fsc.go.jp/sonota/listeria.pdf
・厚生労働省:「リステリアによる食中毒」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

 

【ノロウイルスによる食中毒について】
Q6  ノロウイルスの感染が広く報じられていますが、ノロウイルスによる食中毒の現状を教えてください。
A6  ノロウイルスの感染には、食品からの感染と人から人への感染がありますが、件数としては、後者の割合が高くなってきていると推定されています。また、ノロウイルスによる食中毒は、冬場に多く発生していますが、発生は周年で起きるので、夏場でも注意が必要です。
昨年(平成26年)の食中毒発生件数(976件)のうち、約30%(293件)がノロウイルスによるものです。1件当たりの感染者が多く、食中毒全体の患者数約1.9万人のうちノロウイルスは1万人超となっていて、半数以上(約54%)に上ります。
また、ノロウイルスによる食中毒の原因としては、二枚貝の生食や、調理従事者からの二次感染が多くを占めます。極めて少量のウイルスでも発症し、感染すると24〜48時間の潜伏期を経た後、下痢、おう吐、吐き気、腹痛、37〜38℃の発熱などの症状が現れます。通常1日から2日程度で症状はおさまりますが、乳幼児やお年寄りなどの抵抗力の低い人では重篤化しやすいので注意が必要です。なお、ノロウイルスに対するワクチンはなく、治療は対症療法に限られます。
この9月に、国立感染症研究所が、新しい遺伝子型のノロウイルスが日本で見つかっており、2015/16シーズンに流行する可能性があるとしています。

Q7  ノロウイルスによる食中毒の予防法を教えてください。
A7  ノロウイルスによる食中毒を防ぐためには、以下のような対策が有効です。
(1)  加熱が必要な食品は、中心部まで充分に加熱する(ノロウイルスは85〜90℃・90秒以上で不活化されます)
(2) 野菜などの生鮮食品は、充分に洗浄する
(3) 手指をよく洗浄する
(4) 感染者の便、おう吐物に直接接触しない
(5) 器具や床の消毒には、適正な濃度の次亜塩素酸ナトリウム※を用いる(殺菌剤等として使われる逆性石鹸やエタノールは十分な効果がありません)
※塩素系の漂白剤として市販されています(使用に当たっては「使用上の注意」をよく確認してください)

・食品安全委員会:「ノロウイルスによる食中毒にご注意ください」
https://www.fsc.go.jp/sonota/e1_norovirus.html
・厚生労働省:「ノロウイルスに関するQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html別ウインドウで開きます(外部サイト)
・国立感染症研究所:「新規遺伝子型ノロウイルスGII.P17-GII.17の流行」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/norovirus-m/norovirus-iasrs/5903-pr4273.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

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