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【読み物版】[加熱時に生じるアクリルアミド その2] 平成27年8月31日配信(2015.08.31)


食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[加熱時に生じるアクリルアミド その2] 平成27年8月31日配信(2015.08.31)

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[加熱時に生じるアクリルアミド その2]
平成27年8月31日配信
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前回(8月28日配信)のe-マガジン【読み物版】では、アクリルアミドに関する基本的な情報をお届け
しました。
今号では、アクリルアミドに関するQ&Aと化学物質・汚染物質専門調査会化学物質部会座長の寄稿を
お届けいたします。

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1. アクリルアミドに関するQ&A
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Q1. アクリルアミドとはどんな物質ですか?
A1. アクリルアミドは、主に、紙力増強剤、合成樹脂、土壌改良剤、接着剤、塗料等の原料として広
く用いられているポリアクリルアミドの原料です。無臭の白色結晶で、室温では安定していますが、
紫外線や熱によってポリアクリルアミド(※)になります。

※1分子のアクリルアミド(モノマー)が二つ以上結合した化合物

Q2.なぜ、アクリルアミドが食品の安全に関して話題となっているのですか?
A2. 主に工業用品の原料に用いられ、神経への影響が指摘されていたアクリルアミドが、比較的最近
になって炭水化物を多く含む食材を高温加熱した食品に生成され、多くの食品に含まれていることが
分かってきたことで注目されています。食品からの摂取量の推定や低減策について、我が国はもとよ
り、各国で取組が行われています。
EFSA(欧州食品安全機関)は、今年の6月に「食品中のアクリルアミドに関する科学的意見書」を公表
しています。我が国では、現在、食品安全委員会がリスク評価を行っています。

Q3. アクリルアミドは健康へどんな影響があるのですか?
A3. 今までのところ、食品中のアクリルアミドが原因と特定されたヒトの健康被害の例はありません。
動物を用いた実験では、極めて高用量のアクリルアミドを投与した場合に発がん性が報告されている
ことから、ヒトに対しても発がん性を有する可能性が考えられています。
IARC(国際がん研究機関)では、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」に分
類しています。また、リスク評価の国際機関であるFAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食
品添加物専門家会議(JECFA)は、2005年及び2010年にアクリルアミドについて評価を行い、「通常推定
される平均的な量を摂取してもヒトの健康に有害な影響を与えないが、非常に多量に摂取した場合は、
神経組織の障害を引き起こす可能性がないとはいえない」とし、また、「遺伝毒性及び発がん性の可能
性は否定できない」としました。

Q4.どのような食品に含まれているのですか?
A4. アクリルアミドは、炭水化物を多く含む食品を高温(120℃以上)で加熱調理することにより、生
成される可能性があります。例えば、ポテトチップス、フライドポテトなどジャガイモを揚げたスナ
ックや料理、ビスケット、クッキーのような焼き菓子、あるいはコーヒーなどに比較的多く含まれて
いることが報告されています。

Q5.加熱しなければアクリルアミドはできないのですか?
A5. 加熱していない生の食材にはアクリルアミドは含まれていません。120℃以上の高温で、揚げる、
焼く、焙(あぶ)る際に生成され、ゆでたり、蒸したりした食品にはアクリルアミドが含まれていない
か、含まれていても極く微量であることが報告されています。
なお、食品ではありませんが、私たちが接する身近なものとしては、タバコの煙にもアクリルアミド
が含まれています。

Q6.アクリルアミドが含まれている食品を食べても安全でしょうか?
A6. 食品安全委員会では、日本人が食品からどれくらいのアクリルアミドを摂取しており、そして健
康にどのような影響を与えているのかについて、現在評価しているところです。食品関連事業者の一
部は、すでにアクリルアミドを低減する取組を行っています。家庭で調理する時は、長時間揚げたり
焼いたり炒めたりしないこと、また、じゃがいもは冷蔵庫ではなく冷暗所で保管(※)することが大切
です。
食品にはアクリルアミドのほかにも、摂りすぎれば健康に影響を及ぼす様々な物質が含まれています。
特定の食品に偏ることなく、バランスのとれた食生活を送ることが大切です。

※じゃがいもを冷蔵庫で保管すると、じゃがいもに含まれているでんぷんが分解してアクリルアミド
生成の原因となる還元糖が増えるためです。

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2.「専門調査会委員の随想」(化学物質・汚染物質専門調査会 化学物質部会座長 青木 康展)
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化学物質・汚染物質専門調査会は化学物質部会、汚染物質部会、清涼飲料水部会の3部会から構成さ
れています。
私が座長を務めている化学物質部会では、現在、加熱時に生じるアクリルアミドの健康リスク評価を
審議しています。化学物質・汚染物質専門調査会の審議対象の多くは、製品として生産される物質と
いうよりもむしろ、もともと自然に存在するか、食品の製造や調理の過程で生じる物質で、ほとんど
の場合、多量の摂取による有害性が動物実験や疫学調査で明らかになっています。一方、自然にも存
在するわけですから、微量とはいえ、私たちが日々摂取している可能性のある物質ともいえます。
従って、本専門調査会が審議するリスク評価の大きな目的は、対象とする物質の安全な摂取量を推定
すること、あるいは、私たちの日常の摂取量が安全なレベルであるかを確認していくことです。
審議を進めていくと、リスク評価とは物質が示す有害性の程度の評価、摂取量の推定など様々の科学
研究の結集であることを実感します。有害性の評価には、生命科学の進歩に伴い様々の考え方や手法
が導入されつつありますし、摂取量推定は国際的にみても発展途上の重要な分野です。
リスク評価は総合科学です。この分野へ医学、生物学、化学、数理工学などの豊富な知識を持った若
い研究者が参入することを強く願っています。また、そのための人材育成の必要性を痛感していると
ころです。

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