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食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[食品の加工貯蔵中の化学変化と安全性 その1] (2014.11.14)


食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[食品の加工貯蔵中の化学変化と安全性 その1] (2014.11.14)

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[食品の加工貯蔵中の化学変化と安全性 その1]
平成26年11月14日配信 
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今月のe-マガジン【読み物版】は、本年度(平成26年度)の「食品を科学する-リスクアナリシス
(分析)連続講座」の中から、7月に実施した「誰もが食べている化学物質~食品の加工貯蔵中の化学
変化と安全性~」をお送りします。
今号では、代表的な食品の加工貯蔵中の化学変化であるメイラード反応などについてご紹介します。
また、次号では、Q&Aと委員の随想を予定しています。

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1.すべてのものは化学物質でできている?
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化学物質には、天然のものもあれば、元素又は化合物に化学反応を起こすことにより人工的に合成さ
れるものもあります。食品にも使用されている化学物質について、それぞれの化学物質の性質や安全
性について正しく理解することが大切です。

■化学物質とは
生物を含めてあらゆるものは化学物質でできています。化学物質は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、
窒素(N)、リン(P)、カルシウム(Ca)などの元素で構成されています。
水(水素(H)、酸素(O))、ブドウ糖(炭素(C)、水素(H)、酸素(O))、食塩(ナトリウム(Na)、塩素(Cl))
などは、2つ以上の元素から構成されている化合物です。

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2.食品の貯蔵、加工・調理と化学変化について
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私たちは、生物である植物や動物を収穫し、貯蔵、加工・調理して食べています。その過程で、粉に
する、加熱する、水など他の物質を加える、ビタミンが減少する、有害な成分が減少する、ある成分
とある成分が反応して新たな成分ができる、酸化する、発酵などが行われ、生物に含まれる物質は、
量的にも質的にも変化します。(そしてもちろん、体内でも分解されてエネルギーとなったり、体の一
部となったりと変化します。)

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3.メイラード反応は食品の嗜好性を高める
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■メイラード反応
食品の中でおこる化学反応の一つがメイラード反応です。こんがりした焼き色となったり、焼き上が
りのパンや焼肉の香ばしさなどを生み出します。かつお節の香気成分もそうです。味噌や醤油の色と
香味は麹による発酵で起こるメイラード反応によるものです。メイラード反応は、アミノ酸と還元糖
(のカルボニル基)による化学反応です。これらの物質はヒトの体内にもあるので、体内でも起こって
います。反応の起こりやすさは、温度、成分の濃度、pH、水分含量などが関係します。

■メイラード反応と安全性
メイラード反応は、いいことばかりではありません。リシンは必須アミノ酸ですが反応しやすいこと
から減少します。また、複素環芳香族アミンであるPhIPやアクリルアミドなど、健康によくない物
質も量は少ないのですが生成されます。これら有害物質の安全性については、暴露マージン:MOE
(Margin Of Exposure)の考え方がよく用いられます。これは、無毒性量(NOAEL)などの数値と摂取量
の比であり、EFSA(欧州食品安全機関)では、両者の比が10,000以上であれば健康に対する懸念は低い
とされています。PhIP のMOEは、10,000以上であり懸念は低いと考えられています。

※NOAEL(無毒性量):ある物質について、動物又はヒトに有害な影響が認められない最大量。

■アクリルアミドの低減法
アクリルアミドは、食品からは2002年に見つかりました。アミノ酸であるアスパラギンと還元糖が反
応して生成されます。毒性が懸念されることから、日本の企業ではその低減のための取り組みが行わ
れています。ジャガイモは冷蔵庫で保存しない(多糖類が分解され還元糖が増えるため)、揚げるとき
の温度を高くしすぎないことが進められています。最近では、食品に含まれるアスパラギンを減少さ
せるためのアスパラギナーゼを食品安全委員会でも評価したところです。

※第532回食品安全委員会
資料3-2:食品安全委員会が収集したハザードに関する主な情報
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20141007sfc

※添加物評価書(Aspergillus niger ASP-72株を用いて生産されたアスパラギナーゼ)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20120927657

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4.まとめ
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ヒトが植物や動物を食品として摂取するとき、物質は貯蔵や調理・加工などによって変化しています。
化学反応の一つがメイラード反応であり、好ましい香りや色などが生成されています。同時に有害な
物質も生成されるのですがヒトの健康への影響は、その量を考慮することが必要です。(アクリルアミ
ドに関しては、バランスのとれた食事を守り、揚げすぎや過度の焦げを避けることで摂取量を減らす
ことができます)。

※食品を科学する-リスクアナリシス(分析)連続講座
誰もが食べている化学物質~食品の加工貯蔵中の化学変化と安全性~
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20140731ik1

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